UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

December 10th.

 

December 10th.

 

 

 

 

別れても、時が過ぎても、ずっと忘れられない人はいますか・・・・・・・・・?

 

 

 


「・・・う・・げほっっ・・・っっは・・・っっ・・・・・・・。」


歳の瀬も押し迫った12月10日。
私は柄にもなく部屋の大掃除なんかを始めていた。

だけど、それは無謀にも近く、日頃からたいして綺麗にしていない私の部屋は
埃やらガラクタやらが出るは出るは・・・。
ま、これは自業自得ってやつだから、諦めて続けるしかないのだけれど・・・。

それにしても・・・ねぇ。
この歳の瀬に自分の部屋掃除してて咳込んでるような32歳、しかも女ってどうなのよ?
だから未だにひとりなのよ。って親に言われるんだろうね・・・。
はぁ。


「ん?・・・・何この箱・・・・・?」

押入れの隅から出てきた小さなダンボール箱。
だいぶ年期が入ってるらしく、その箱はかなり埃まみれで薄汚れていた。
私は掃除する手を休め、何気にその箱をあけてみる。


「・・・あ・・・・・・・・・・。」

中からは赤いラインのはいった、フルフェイスのバイクのヘルメット。

これは・・・。

記憶が一気にリバースされる。
行き付く先は、12年前の夏。20歳の夏・・・・・。


私とあいつとは、専門学校の同級生だった。
とくに目立つわけじゃない私は、男子生徒となんて話すことなんて滅多になかった。
だけど、あいつとだけはよく分からないけど話せた。
家が近いって事もあって、よく一緒に帰ったりもしてた。
あいつが専門学校へ入る前、高校へ通いながら芸能活動してたって話も聞いた。
一緒にいると楽しかった。
なんだか分からないけど、落ちついた気分になれた。

気付いたら・・・好きになってた・・・。

このヘルメットは、あいつが私にくれた20歳の誕生日プレゼント。
最高に幸せな言葉と一緒に
私にくれた誕生日プレゼント。
「一緒にふたりが好きな湘南の海を見に行こう。」ってあいつがくれた
私専用のヘルメット・・・。

幸せだったな。
あいつの後ろに乗って見に行った湘南の海は、今でも思い出せる。

だけど・・・。

その幸せ壊したのは私なんだ。
ほんの小さなことだったのに。今思えば全然たいしたことなんかじゃないのに。
あの頃の私には許すことが出来なくて
一方的に別れを切り出してた。
ただ、『私の親友とサッカー観に行った。』っていうだけなのにね。

 


別れても忘れられないのは、今でも思い出すと切ないのは
自分が悪いって分かっているから。単なるワガママだったって後悔してるから・・・・・・・・・・・

 


「捨てにいこ・・・。」


思い出立ち切るためには、そういう”忘れ形見”はとっておいちゃいけない。
私は小さなダンボールと一緒に近くのゴミ捨て場へと向かった。

だけど変な話。
ゴミ捨て場でいざ捨てるときになってみると、イマイチ勇気がなくなる。
捨てるっていうことは・・・思い出までなくしてしまいそうで・・・。
もう12年も前のことなのに、なんだか吹っ切れないでいる自分がいた。

なんて未練たらしいんだろ、私って・・・。持ってたって・・・意味ないんだから・・・。

 

「それ、捨てちゃうんですか?」

ため息混じりに小さなダンボールを置きかけた時、背後から尋ねる声がした。
私は、その声に振りかえる。


「・・・・・・・・・・・・・。」


ウソ・・・・。


「・・・・・・・・・・・・・。」


驚きのあまり言葉が出ない。
だって
その声は、”あいつ”・・・・私の忘れられない思い出の主、”長野博”だったから。


「久しぶり。」
「・・・・・・・・長野・・・・。」
「それヘルメットだろ?」
「・・・・・うん。」
「捨てちゃうんだ?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「もったいないなぁ。それさ、高いのに?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「まだ使うことあるかもしれないじゃん。」
「・・・ないよ。・・だって私・・・バイク乗らないし・・・。」
「・・・そっか。」
「・・・・・・・うん。」


『久しぶり。』
彼にとってはそうだろう。卒業以来会っていないんだから。
だけど、私は長野の活躍を知ってる。だって・・・テレビでいつも見てるから。


「おまえさ、バイクの免許とってないんだ?」
「え?」
「取る取る言ってたのに。結局挫折?」
「な、そういう言い方ないじゃない。私だって・・・いろいろ・・いそがしかった・・・のよ。」
「あはは、ごめん、ごめん。だけどさ、それ・・・まだ持ってたんだ?」
「え・・?」
「それさ、俺があげたやつでしょ?専門学校ん時に。」
「・・・・・・・・うん・・・。」
「10年以上前だろ?凄いな、おまえ。」
「べ、べつに凄くないよ。だってさっきまで・・気付かなかったんだもん。」
「ん?何それ。」
「・・・・・・・・・押入れのすみに眠ってた。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「長野?」
「おまえさ・・・・・・・・。」
「な、何?」
「そういう無頓着なとこ全然変わってない。」
「ちょっっ・・失礼ね!!」


長野だって変わってなかった。
屈託ない笑顔で話しかけてくる。
だけど、私には少しそれが切なくもあった。
だってそれは、彼の中で私は、もう”あの頃の私”じゃなくて、”彼女”じゃなくて
単なる”昔の彼女”っていうだけの存在ってことだから。
もしかしたら、ただの”昔の同級生”かもしれない。

思い出が鮮やかなのは私だけ。・・・忘れられないのは・・・・私だけ・・・。

 

「ねぇ。」
「え?」
「どっちの手に入ってるか?」
「・・・は?何突然・・・。」
「いいから。どっち?」
「・・・・・・・・・。」
「どっち?」
「・・・・じゃぁ・・・・こっち。」


私は”右手”を指した。

その答えは簡単だった。
だって、長野はいつもそうだったから。
私に答えを求めるときは、いつも”右手”に何かを忍ばせていたから・・・・。


「あ、はは・・当たり。」

長野はそう言いながら、そっと右の手のひらを開けた。

「・・・・カギ?」
「うん。」
「何の・・・・あ、もしかして・・・バイク?」
「正解。」


子供のような笑顔を向ける。

「・・・・・・・・・・・・。」
「さ、海行こう。」
「は?!」
「は?!、じゃなくって海。・・あ、俺余分なヘルメット持ってないから、それかぶって。」
「・・・へ?」

長野は私が捨てに来た”小さなダンボール”を指差した。

「・・・・・・・・・・・。」

何がどうなっているのか、イマイチ状況がつかめない。
どういうこと?
海って・・・。
どういうこと・・・・?

「ほら、早く。早くしないと日が暮れちゃうよ?」
「・・・ちょっ・・・っっ・・。」

長野はそう言うやいなや、私の手をつかみ歩き出す。

「ちょっと、痛いよ。ていうか・・・引っ張んないでよ。」
「じゃぁ、さっさと歩く。」

人差し指をおでこに軽く突き刺した。

「いた。やめてよ。」
「いちいち文句言わないの。」

この人・・・・。

なんだか長野は昔に比べて強気になった気がする。
今はなんだか妙に・・・・男らしい・・・。

そうだよね、だって、そこには12年もの月日が流れてるんだもんね・・・・・・・・。

 

「そうだ。」

何かを思い出したように、長野は急に止まった。
そうすれば、必然的に私は彼の背中にぶつかってしまうわけで・・・・。


「いたっっ!ちょっと、急に止まらないでよ!!!」
「あ、ごめん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


その笑顔は止めてよ。
何も言えなくなるじゃないの・・・・・。


「ねぇ。」
「え?」
「どっちの手に入ってるか?」
「は??また?!」
「そう。」
「何なのよ今度は?」
「いいから。文句言わないで選ぶ。」
「・・・・・・・・分かったわよ。」
「で、どっち?」
「・・・じゃぁ・・・・・・・・こっち。」


私はやっぱり”右手”を指した。


「はは・・また当たりだ。」

長野はそう言って、笑いながら、右の手のひらを開けた。


「・・・・・・・・指輪?」
「そう。」
「・・・・・・何で?」
「・・・今日さ、何の日か覚えてる?」
「今日?」


今日は12月10日。
クリスマスはだいぶ先だし、誰かの誕生日ってわけでもないはず・・・。
何?

「・・・・・・・・・・・・。」
「わかんない?」
「・・・・・うん。思いつかない。」
「そっか。」
「・…・・…・何?」
「俺が一番傷ついた日。」
「・・・え?」
「おまえが俺に、別れる。って宣言した日だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」


そう・・・・だった・・?
私、そんなこと覚えてない・・・・。
長野は・・・覚えてたの?・・・・ずっと忘れてなかったの・・・・・?


「この指輪さ、その年のクリスマスにあげるつもりだったんだ。・・・だけど・・・ね?」
「・・・・・・・・・・・・・。」

長野は意地悪そうな笑顔を向けた。
私は・・・何も言えなかった。


「悪いけどさ、責任とってもらってくんない?」
「え?!」
「行き場ないから。捨てんのもったいないしさ。」
「・・・・・・でも・・。」
「いるの?いらないの?」
「・・・・・・・・・・・。」
「どっち?」
「・・・・・・・・い・・る。」
「よろしい。」


なんだか意味分からないけど・・・。
12年経った今、いきなり指輪なんかもらったってどうしていいのか分からないけど・・・・。
だけど・・・・・。
何故か、妙に嬉しい気持ちでいっぱいの私がそこには居た。


「ねぇ・・・はめてくれないんだ?」
「あ?何言ってんの。甘えてないで自分ではめなさい。」
「・・・だって、ヘルメット持っててはめられないんだもん。」
「・・・・・・・・仕方ないなぁ。」


長野は、子供をあやすお父さんみたいな優しい顔をして笑った。
そして、そっと私の右手の薬指に、その指輪をはめてくれた。


「・・・ありがとう。」
「いえいえ。」

 

!?・・・・・・っ?!・・・なっっ?!・・・・なに・・?!?


「ははは。すごい顔してるよ?」
「だ、だって・・・。」
「いいじゃん。これくらいは・・・ねぇ?」
「・・・・・・・・・・。」


いきなりホッペにキスされた・・・・・・・・・。


よ、よくないわよ、全然。
これくらいじゃないわよ、全然。
顔から火が出そう。
うわぁん・・・。どうしよう。まともに顔が見れないよ・・・・・。
バカぁ・・・。

 


「さ、行くよ。早くしないと日が暮れちゃう。」


彼はポケットに両手を突っ込んで歩き出す。


「うん。」


私はその後を小走りで追いかける。

 


12年前の12月10日。私が彼に別れを切り出した日。

別れても、時が過ぎても、ずっと忘れられなかったのは、きっと誰よりも大切な人だったから。

 

今年の12月10日。12年ぶりに再会した日。

作ることが出来なかった12年間分の思い出は、今日からふたりで作ればいい。

 

この日から始まる、ふたりの新しい思い出を・・・・・・・。

 

 

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長野くんでした。

6人それぞれのお話を公開しましたが、最後は長野くんです。

筆者、実は96年からV6ファンですけど、ずっと長野くんファンです。

普通、一番好きな人のお話が書きやすいと思うんですけど、長野くんに限っては書けない書けない!!

このお話が初長野くんだったんですが、そこに至るまで他のメンバーは既に結構いろいろ書いていたというね(笑)

そして、初めて書いてもう書かない宣言もしてました当時^^;その後数話は書きましたけども微妙~~(笑)

 

長野くんは、長い間忘れられない様な人が居て・・とか、好きな人には男らしく思いをぶつけて行くんだろうとか私なりの勝手な印象があってね。

そんなことを混ぜ込んだお話でありました。

彼女が長野くんを「長野」って呼ぶのが実はツボなのです^^