UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

翼在りし者たち【Ⅲ】

 

このお話は、数話続く長編です。

(私が書いたその他の長編に比べると比較的短く中編程度ですが)

公開当時はイノッチのお誕生日記念作でした。

 

そして、今までの恋愛ものとは少し離れて現実には起こり得ないことがメインになったお話です。

イノッチのお誕生日記念だったので主人公はイノッチ。

そのイノッチと関わるキャラクターにカミセン。

でも、カミセンはカミセンだけどカミセンではありません。

(最終的にはメンバー全員登場します。)

 

テーマは「絆」です。

 

興味を持って頂けましたら、幸いです^^

今回は第3話になります。

 

 

 

 

 

 

 

翼在りし者たち【Ⅲ】

 

 

 

 

 

 

心の糸

 

 

 

「どうする?」

ゴウがしゃがみ込んで俺の顔を覗きこむ。

「かなりの覚悟が必要だけど・・・平気?」

それにケンも続いた。

「成功したらあんたは2005年に戻れる。だけど・・・・・。」

ジュンは語尾を濁しながら、唇をきゅっと結んだ。
そして、意を決したように言葉の続きを告げながら、俺の前へとしゃがみ込む。

「もし失敗したら、あんたは俺らと同じ1995年に落ちるかもしれん。」
「・・・・・・・・。」
「もしそうなったら、一生隠れてコソコソ生きなあかん。」
「・・・・・・・・・。」
「だけどな、それはまだましや。」
「・・・え?」
「もしかしたら、もっと別の時間に飛ばされるかもしれない。それか、永遠に時空をさまようことになるかもしれん。」
「・・・・・・・・。」
「どうする?決めるのはあんたやけど?」
「・・・俺・・・。」


正直と惑っていた。
成功する確率は低い。だけど、このままここに居るのなら・・・でも失敗したら・・・・・・。
期待と不安が入り混じった訳の分からない感情だった。

 

 

「なぁ。」

黙りこむ俺にゴウが口を開いた。

「え?」
「あんたさ、”心の糸”って知ってっか?」
「・・・心の糸?」
「あぁ。・・ま、あんたらの世界じゃ”赤い糸”とか言って小指から出てるって話だけどさ。」
「あ、あぁ。赤い糸?それなら知ってる。」
「俺らの世界じゃ”心の糸”って言ってんだ。」
「・・・へぇ。」
「それは小指からじゃなくて、ホントにここ・・心臓から伸びてて、ずっと逢うべき人を探してる。」
「・・・・・・・・・。」
「それは、男と女に限ったことじゃなくて男同士でも親子でもなんだ。」
「・・・・・・・。」
「俺らは、その”心の糸”を結ぶのが仕事ってわけ。」
「・・・へぇ・・・。」
「あんたさ、大事な奴とかって・・・いるか?」
「え?・・あぁ・・うん、一応・・・。」
「じゃぁさ、きっとそいつらの”心の糸”があんたを探してるよ。」
「え?」
「あんたがそいつらを探し求めてさえ居れば、きっとまた巡り会えるよ。」
「・・・・・・・・。」
「そいつらのところへ戻れるさ。」


ゴウは悪戯な笑顔を俺へと向けた。
それは、まるで剛が俺に笑い掛けてくれたみたいで、思わず涙が出そうになった。

 

「俺・・・・。」

心は決まった。
賭けてみよう。こいつらに。
剛と健と岡田にそっくりなこの3人に賭けてみよう。
・・・きっと、俺はそうするためにこいつらに出会ったんだ。きっとさ・・・・・・。


「やってみるよ。賭けてみる。」


俺の言葉に3人は顔を見合わせて、とびきりの笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 


3人は俺を囲んで小さな輪を作って座った。
そして、真剣な面持ちで言う。

「これは、俺らにとっても賭けなんや。」
「え?」
「俺たちの世界ではね、人間と関わっちゃいけないって掟があるの。」
「・・えっ・・。」
「その掟を破ったら・・まぁ、ひでぇ罰が待ってるって訳だ。」
「えぇっ?!」
「だから、失敗するわけにはいかないんや。」
「そう。失敗したらばれちゃうからね。」
「あんただけじゃなく、この先の俺らの運命も変わるってことだ。」
「そ、そんな・・・。」
「びびった?」
「へ?」
「恐くなっちゃったとか?」
「へっ?!」
「今更びびられても困んだけど?俺らも覚悟決めたんだしさ。なぁ?」
「うん。」
「そうや。」
「だから、頼むぜ?」
「あ、あの・・・。」
「な?」
「ね?」
「気楽に行こうや。な?」
「・・・う、うん・・。」

俺は大きく息を吸い込んだ。

「しっかり掴まっててよ?」
「う、うん・・。」
「手離したらあかんで?」
「う、うん・・・。」
「強く・・・強く念じろよ。”心の糸”探し求めろよ?」
「・・・・うん。」

俺は3人が伸ばした腕をきつく掴んだ。

「よっしゃぁ。」
「行くよ?」
「OK。」

3人は今日初めてってほどの真剣な表情を覗かせた。

 

「READY?」


ジュンの声にゴウとケンは小さく頷く。

 

「「「GO!!!」」」

 

 

 

 


俺の身体は3人と一緒に地面をすりぬけた。
周りは眩しいくらいの光を放っていて、目を開けていることもままならないほどだった。


「・・な、な、なぁ?」
「あ?」
「何?こんな時に?」
「静かにしててや。」
「こ、これから何処へ行くんだ?」
「は?今更何聞いてんだよ?」
「そうだよ。東京に決まってんじゃん。」
「東京?」
「そう。俺らは1995年の東京に仕事をしに行くって訳や。」
「・・仕事?」
「そう。愛のキューピッドだからね。」
「あ、あぁ・・・。」
「”心の糸”を繋ぎに行くって訳。」
「今回は男と女のね。」
「へ、へぇ・・。どんな感じなの?」
「それを聞くか?」
「え?」
「そういうこと聞くのも珍しいよね。」
「そ、そうなの?」
「まぁね。確か今回は・・・。あぁ、東京在住の23歳。坂本昌行・・だったかな?」
「・・へっっ??!さ、坂本っっ?!」
「かーなり、手強い片思いらしいんだよねぇ・・・。」
「そそそ、そうなんだ?」
「うん。だから、3人一緒なんだよ。」
「・・・はぁ・・。」
「そう言うわけだから、あんたもちゃーんと2005年へ帰ってよ。ね?」
「・・え、え?。」
「じゃねぇと、仕事に集中できねぇだろ?」
「あ、あぁ、うん・・・。」
「何、不安そうな顔してんねん?」
「そうだよ。」
「自信持てよ。”心の糸”は繋がるんだろ?」
「・・・・・・・・。」
「頑張れよ。」
「頑張ってね。」
「頑張ってな。」
「・・うん。」

 

 

記憶はここですべて途切れた。

 

 

俺が最後に見たものは、剛と健と岡田にそっくりな”ゴウ”と”ケン”と”ジュン”の
これ以上ないって位に最高の笑顔だったんだ。

 

 

 

 

---------to be continued---------