UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

翼在りし者たち【Ⅱ】

 

このお話は、数話続く長編です。

(私が書いたその他の長編に比べると比較的短く中編程度ですが)

公開当時はイノッチのお誕生日記念作でした。

 

そして、今までの恋愛ものとは少し離れて現実には起こり得ないことがメインになったお話です。

イノッチのお誕生日記念だったので主人公はイノッチ。

そのイノッチと関わるキャラクターにカミセン。

でも、カミセンはカミセンだけどカミセンではありません。

(最終的にはメンバー全員登場します。)

 

テーマは「絆」です。

 

興味を持って頂けましたら、幸いです^^

今回は第2話になります。

 

 

 

 

 

 

 

翼在りし者たち【Ⅱ】

 

 

 

 

 

~同じ顔を持つ男~

 

 

 


「おい、聞いてんのかよ?」

「・・・・・・・・・・・。」

「あんた、どっから入り込んだんだって聞いてんだよ?」

「・・・・・・剛・・・。」

「はっっ?!」


訝しげに眉間にシワを寄せて俺を睨んでた男に、俺は無意識のうちに、よく知った”あいつ”の名を呟いてしまっていた。
男は案の定すっとんきょうな声を上げ、目を丸くして俺を見ている。
・・・だよな。俺、全く聞かれてることと違うこと答えてんもんな。・・・でもさぁ・・・・・。


「おい。」


そんな俺に、男はますます眉間のシワを深く刻みこんで言った。

「あんた、何で俺の名前知ってんだ?」

・・・・は?

「つーか、何で知ってんだって聞いてんだろ?」

・・・・ウ、ウソだろ?こいつの名前が・・・・”剛”・・?!


「あ、あのさぁ?」
「何だよ?」
「き、君の名前って・・・”剛”っていうの?」
「あぁ。それがどうしたってんだよ。」
「え、あの・・もしかして・・森田剛・・?」
「・・・・・・・・・・。」

訳が分からないって顔をした。
そして、眉間にシワを刻みこんだまま小首を傾げ不機嫌そうに呟く。

「・・・モリタって何だよ?」
「はっ?」
「俺の名前は”ゴウ”だ。モリタでもモリタゴウでもねぇ。”ゴウ”だ。」
「・・・・・・・・。」


森田剛”じゃなくって”ゴウ”・・・。
ってことは、こいつは別人なんだよな?・・・え?じゃぁ、何で全く同じ顔してんだよ?
・・・・何でだよ?

パニックだったり放心状態だったり、こんな短い時間の中でかなり忙しい体験をしてるせいで、俺は一気に20歳くらい歳を取ってしまった気分だった。
・・・だが、そんな俺にまたもや10歳くらい歳を取らせるような事態が巻き起こる。

 

 

 

「ねぇ、ゴウ!」

少し高い声がしたと思ったら、”ゴウ”という名の男の背後に突然ひとりの若い男が姿を現した。まるでそれは、『姿を現した』というよりは、『涌き出た』って言った方がぴったりだっていう感じで地面からニョキっと・・・。

・・・・・う、ううううわぁっ・・・!

思わず後ろにひっくり返りそうになった。
・・・そんな登場の仕方ありかよ?!忍者でもあるまいしっ!
そっ、それにっっ・・・こ、こいつはっっ・・・け、健っっ??!!


「・・・誰?」

そして、俺を見つけるやいなや、その男はきょとんとした顔でポツリと尋ねる。
その表情は、やっぱり”健”にそっくりで、俺はかなり動揺していた。

「あ、あの・・・。」
「何でそんな格好してるの?」
「え?そ、それは・・・・・。」
「変だよねぇ?」

・・・こっちのセリフだってーの。

「あ、ゴウの知り合いとか?」
「へ?」

急に、無邪気な『答えわかりました。』って言うような笑顔を浮かべた。
だけど、その笑顔は一瞬にして隣りの”眉間にシワ野郎”によって消されることになる。

「んな訳ねぇだろが。バカ言ってんじゃねぇよ。」
「あ、そうなんだ?」
「あたりめぇだろ、こんな訳わかんねぇような格好した奴。」
「それもそうだねぇ。」
「俺だって知りてぇよ。」
「うん。」
「でもこいつ、さっきからだんまり決め込みやがってよ。な?」

突然二人で俺を見る。
その様子はまるで、俺が数日前にも見たような同じ光景で・・・・・。

「へっ?!」
「シカトこいてんだよな?」
「へっ?」
「そうなんだ?聞かれたことはさぁ、答えなくちゃじゃない?」
「だよなぁ?」
「あ、あの・・・。」
「そんな目立つ格好してて怪しまれない方がおかしいだろうってな?」
「そうだよねぇ。」
「あ、あのぉ・・・・・・。」
「何だよ?」
「き、君は・・ゴウくん?」
「あぁ。さっき言っただろ。」
「じゃ、じゃぁ・・・き、君は・・・・?」
「え?俺?」
「・・う、うん・・・。」
「ていうかさ、人の名前聞くんならさぁ、自分の名前先に言うのが普通じゃん?」
「へっ?」
「だよねぇ?ゴウ。」
「まぁな。」
「そ、そうね。・・・あ、あの俺は・・・井ノ原快彦。」
「イノハラヨシヒコ?」
「そう。」
「ずいぶん長いね?」
「は?」
「だって、こいつはゴウでしょ。俺だってケンでしょ?」
「へ?」
「あ、俺の名前はね”ケン”っていうんだけどね。」
「・・ケン・・くんですか・・。」


マジでひっくり返りそうになった。
これで岡田まで出てきたら俺はどうなっちまうんだろう・・・・・・・・。

 

 

 


「なぁに、ふたりで虐めてんねん。」

少し低めの穏やかな声が聞こえたと思ったら、突然空中に、ひとりの若い男が姿を現した。
あたかも瞬間移動でもして来たみたいに。
そして、空中に浮かんで腕をくみながら、こっちをニヤニヤと眺めてた。

・・・・・おおおおおおっ・・・おぉぉうわぁぁぁぁっっ・・!!

腰が抜けそうになった。
・・・そんな登場の仕方ありかよ?!魔法使いでもあるまいしっ!
そっ、それにっっ・・・こ、こいつはっっ・・・お、お、岡田っっ??!!


「さっきからふたりで虐めちゃって。なんか可哀相やで?」


そう言いながら、ゆっくりと俺達のところへと降りてくる。
その表情や仕草、話し方までまるっきり岡田にそっくりだった。


「うっせーな。別に虐めてねぇよ。」
「そうだよ。虐めてるなんて人聞き悪いこというなよ。」
「だって、俺にはそう見えたんやもん。」
「おめぇだけだろが。」
「そうそう。俺ら別に虐めてないもん。ね、ゴウ?」
「・・・気付いてへんだけや。」
「なんか言ったか?」
「いや、なんも。」
「ぜってぇ、なんか言ったよ?白状しろよなぁ。」
「言ってへんって。」

会話のやり取りまで似てやがる・・・。
ていうか、こいつの名前が岡田と同じだったらどうしよう・・・・。
俺はそんなことを考えながら、しばしこいつら3人の痴話喧嘩を黙って眺めていた。


「じゃぁさ、俺とゴウがこいつに何処から来たのか聞いてたら虐めなのかよ?」
「そんなこと言ってないやろ。」
「言ってんじゃん。ねぇ、ゴウ?」
「・・つーか、おまえはホントのとこ何が言いてぇんだ?」
「え?」
「なんか知ってんじゃねぇの?」
「・・・・さすがやな。」
「え?知ってるって??」
「あ?こいつ何か気付いてんだよ。あの男の事。」
「え?そうなの?ねぇ、ジュン?」
「・・・たぶんね。」


・・・・い、今・・”ジュン”って言った・・・・・・。

俺は愕然とした。
目が覚めたら真っ白な世界で。そこにいる人はみんな翼を持ってて。
そしたら、そこには剛がいて。健は地面から生えて来て。
岡田に至っては空中に浮かんでた。
・・・なんなんだよこれは。もう、訳わかんねぇよ・・・・。

 

「なぁ、あんた。」

愕然とする俺に、岡田と同じ顔をした”ジュン”って名前の奴が声をかける。

「あんた”人間”やろ?」
「へっ?」
「違うとこから迷いこんだんや。・・・”人間”に違いない。」
「あ、あの・・・。」

ジュンの言葉にゴウとケンは一斉に俺を見た。

「人間?!」
「ウソだろ?じゃ、どうやって・・・・。」
「それはたぶん、本人すら分かってへんよ。」
「それって何?」
「ジュン、どういうことだ?」
「うん。きっとね、遠のいてく意識の中で、死にたくないって気持ちが働いてここに落ちちゃったんやろね。」
「死にたくないとここへ落ちるの?」
「・・・よくわかんねぇな。」
「はは。天国でも地獄でもない。まだ意識はあるから途中で道草してるようなもんやな。」
「・・・道草。」
「寄り道してるってこと?」
「変な表現やけど、この人はまだ死んでへんし、さまよってるだけだよ。」
「・・・へぇ。」
「ふぅん・・・。」


こいつらは、当の俺を無視して3人で話を進めていた。
でも、俺の耳に飛び込んでくる言葉は不可解なものばっかりで、どうして良いか分からなかった。自分がどうなっちまってるのかさえも。


「な、なぁ・・?」

俺の声に3人は一斉にこちらを向いた。

「お、俺が死んで無いんなら、なんでこんな天国みたいなとこにいるんだ?」
「・・・・・・・。」
「なんで、天使みたいな格好のあんたらと出会ってんだ?」
「・・・・・・・・。」

3人は互いに顔を見合わせていた。
そして、やや困ったような顔をしてジュンがその答えを俺へと告げた。


「ここは天国やないよ。」
「へっ?」
「俺らは天使でもない。」
「・・・は?」
「ま、天使って言っちゃ天使なんだろうけど・・・神様に使えてるわけやないから・・・
 何て言うかあんたが思ってるような天使とは違うねん。」
「は、はぁ・・・?」

訳が分からなかった。
ジュンはたぶん分かりやすいように説明してるんだろうけど、やっぱりわからなかった。

「ま、何だかんだ言っても手っ取り早く言えば俺らも天使やねん。」
「はっ?」
「だけど、神に使えてなくて人間のために働いてる。」
「・・・人間のため・・に?」
「そう。いわゆる・・・愛の天使ってやつ?」
「はい??」
「うーん、あんたが思ってるような天使が”エンジェル”だとするやろ?したら、俺らは
 ”キューピッド”やねん。愛を叶えるキューピッド様ってやつ。」
「・・はぁ。」
「だから、あんたは天国みたいな俺らの国の”愛国”に落っこちちゃったわけ。」
「・・・・・・・。」
「死んでへんから天国にも行かれない。地獄へも落ちれない。だからね、ここ。」
「・・・・・・・・。」


なんとなくだけど、少しは理解出来たような気がしていた。
つまり、俺は死んじゃいなくて。だけど、意識がないからさまよってて、それでここへ落ちた。

・・じゃぁ。じゃぁ、俺はどうやったら帰れるんだ?
死んでいないなら元居た場所へ帰れるんじゃないのか?
・・・帰りてぇよ。今すぐ帰りてぇよ。
ここでこいつらの顔見ちゃったら、急にみんなのこと思い出しちまったよ。
あいてぇよ。みんなに。・・・坂本くんに。長野くんに。それに・・・・・。
こんな、背中に羽根なんか生えてない剛と健と岡田にも・・・。

 


「な、なぁ?」

切羽詰った俺の様子を察したのか、3人は少しだけ後ろへと後ずさった。

「な、なんだよ?」
「何?」
「・・何や・・?」

俺はそんな3人にすがるように近づいた。
そして、ジュンの両腕をがっしりと掴み、大きく揺さぶる。

「なぁ、どうにかしてくれよ。」
「え?」
「俺帰りてぇんだよ。元居たところに。帰りてぇんだよ。」
「・・あ、あぁ・・。」
「なぁ。どうやったら帰れるんだ?」
「・・・・・・・・。」
「どうやったら2005年の5月に戻れるんだ?!」
「・・・・2005年の5月・・・?」
「・・あぁ。」

ジュンは、俺の手を振り解き上着を整える。
そして、軽く眉根を寄せながら俺の顔を覗きこんで言った。


「あんた・・2005年から来たのか?」
「・・あぁ。2005年の5月だよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「なんだよ?」
「・・・そりゃ、無理やな。」
「へっ?!」
「無理や。あんたは元には戻れない。」
「な、なんだよそれ?!戻れないって。・・死んでないだろ?俺生きてんだろ?何でだよ?!」
「・・・それは。」
「なんだよ?!」
「違いすぎるんや。」
「は?!」
「時間が違いすぎる。」
「・・・時間が・・違いすぎる・・・?」
「あぁ。」
「どういうことだよ?」
「・・・・・・・・・。」
「なぁ?」
「ここは、今は・・・1995年や・・・・。」
「・・・は・・・?」


俺はへなへなとその場へと座りこんだ。
・・・1995年?なんだよ、それ。10年も前じゃんか。・・・10年も・・・。
俺時間まで超えちゃったってことかよ?
戻れないって。そしたらどうすんだよ?このままかよ?このまま死ぬってことかよ?
永久にみんなには会えないってことなのかよ?!
なんだよ、それ・・・・・・。

 

俺はうつむいたままだった。
3人はただ黙って俺の前に立っていた。

・・・・どうしたらいいんだよ?どうしたら・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「手段がないわけやないよ。」

 


途方にくれてうつむく俺の頭上から、ジュンの声が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げると、3人が揃って俺を見下ろし、何かを企んだように微笑んでいた。

 


「ただし、かなり確率の低い”賭け”やけどね。」

 


ジュンの言葉にゴウとケンが静かに頷いた。

 

 

 

 ----------to be continued----------