UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

翼在りし者たち【Ⅳ】

 

このお話は、数話続く長編です。

(私が書いたその他の長編に比べると比較的短く中編程度ですが)

公開当時はイノッチのお誕生日記念作でした。

 

そして、今までの恋愛ものとは少し離れて現実には起こり得ないことがメインになったお話です。

イノッチのお誕生日記念だったので主人公はイノッチ。

そのイノッチと関わるキャラクターにカミセン。

でも、カミセンはカミセンだけどカミセンではありません。

(最終的にはメンバー全員登場します。)

 

テーマは「絆」です。

 

興味を持って頂けましたら、幸いです^^

今回は最終話になります。

 

 

 

 

 

 

翼在りし者たち【Ⅳ】

 

 

 

 

 

~エピローグ~

 

 

 

 

「ねぇ、まだ起きない?」


とある病院の一室。
ベッドに横たわる井ノ原の脇で、その様子をじっと眺めていた長野のところへ健が近寄り、井ノ原の顔を覗きこみながらポツリと尋ねる。


「起きない?ってねぇ・・寝てるんじゃないんだから・・・。」

無邪気極まりない健に長野は思わず苦笑した。
そんな長野の様子に気付いたのか気付かなかったのか、健は「ふぅん・・。」と一言呟いて、また元居た部屋の隅っこへと戻り、小さなため息と共に、どっかと椅子に腰を下ろした。

「まだなんだ?」

健のため息に気付いた剛が、チラッとその方へと視線を向け、ボソッと言う。

「・・うん。」

健は落ちこんでいるのが誰から見ても分かるほどだった。
自分だってかなり落ちこんでいる。だけど、健みたいにあからさまにそれを態度に出せないだけの話で・・・。
剛はやりきれない気分でいっぱいになった。
その手は、自然と健の背中をポンポンと叩いていた。


そんな二人の様子を部屋の反対の隅から眺めていた岡田は、ひとりため息をついた。
たったひとりいないだけなのに・・・。
いや、いないんじゃなくて”眠って”しまっているだけなのに・・・。
なんだか今までとはまるで違う空間が広がっているように岡田には思えてならなかった。
・・・早く目覚ましてや・・イノッチ・・・・。

 

 

「こうして見てると、なんだか起きてるって錯覚しちゃうんだけどね・・・。」

何気なく呟いた長野の声に、隣りの空いたベッドに腰をかけて黙々と林檎をむいていた坂本はピタッとその手を止めた。
そして、「どう言う意味だよ?」と長野に向かって尋ねる。

「ん?だってさ、目つぶってても開いててもあんま変わらないじゃん?」

「・・・・・おまえ・・・・。」

こんな事態の時までも、相変わらず毒のある言葉を吐く長野に坂本は一瞬固まった。
しかし、次の瞬間に見た長野の寂しそうな横顔に何も言えなくなった。

”寂しそうな横顔”
それは長野に限ったことじゃなくて。健だってそうだ。
特別態度には出さないけれど剛だって、岡田だって同じ気持ちだろう。
・・・正直俺は、今にも泣き出しそうだ・・・。
坂本は、時折瞼の奥が熱くなるのを感じていた。
一分一秒が長い。時計の針の音だけが部屋の中に響いている。重苦しい沈黙。
・・・・・井ノ原、早く目覚ませよ・・・・・。

 

 

 

 

「あっ!坂本くん!」

長野は小さな驚きの声をあげ、坂本を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「・・・・・・なが・・の・・くん?」


目が覚めた。
見上げる天井は白かったけど、今度は全てが白いわけじゃなかった。
そこには長野くんの驚いてるけど嬉しそうな顔があったんだ。

「井ノ原?!俺分かるの?なぁ?分かるのか?!」

「あ・・うん・・・わかる・・よ?」

「いのはらぁ・・・・。」

長野くんは突然俺に覆い被さってきた。

「ちょ・・ちょっと長野くんっ?!・・いてぇよ、つか、キモイよっ。」

「うるせーよ・・・。」

拗ねたようにボソッと呟いて微かに笑った長野くんは、
ずっと座ってたんであろう椅子に静かに座りなおした。
そして、後ろを振り返ってそこに座ってた坂本くんに向かって小さく頷いた。

 

「・・坂本くん・・・。」

坂本くんは林檎をむいてた手を休めることなく、上目遣いでチラリと俺を見る。

「・・・・ごめんね・・・。」

そして、謝る俺に向かって、「ばぁか。」って笑った。
・・・ホントだね。俺・・バカだね。みんなに心配かけてさ。ホント・・バカだね。

 

 

 

俺はふと思い出してた。あの”白の世界”のことを。
もしかしたら、あれは全部俺の見た夢だったのかもって思えて来たりもしてた。
・・・全部が夢・・・。
剛と健と岡田にそっくりだった、あいつら3人も全部・・・・。

 

・・・・ん?!


不意に握った手のひらに何かがあるのを感じた。
俺はこっそりと、布団の中でその手の中を確かめる。


・・・・これ・・・。


そこには”証”が残っていた。
さっきまでのが全て俺の夢じゃなかったんだって言う”証”。
ゴウとケンとジュンは夢なんかじゃなかったんだって言う”証”が。
・・・あいつらの着てた上着に巻かれたファーの羽根がひとつだけ残っていたんだ。

 


「・・ねぇ、坂本くん・・?」

「あ?」

坂本くんは、やぱりさっきと同じように俺を上目遣いで見る。

「・・あのさ・・。」

・・・10年前に剛と健と岡田にそっくりな天使に逢った?

喉元まで出かかったこのセリフを、俺は寸でのところで飲みこんだ。
坂本くんは少しだけ眉間にシワを寄せながら、俺の言葉の続きを待ってる。

「何だよ?」

「・・あのさ・・。」

「あ?」

「・・・・・・リンゴ・・ちょうだい・・・。」

「・・・・・・・・。」

坂本くんは、微かに鼻で笑ってナイフを置いた。
そして、器に盛ってあった林檎を俺のところへと持って来る。

「ほらよ。」

「・・ありがと。」


どうして言葉を飲みこんだのかはよく分からない。
突然あいつら3人が言ってたあの世界の掟ってやつが浮かんできたからかもしれないし、
そうじゃないかもしれない。
だけど・・・・。
なんとなく、さっきまでのことは俺の中にしまっておきたいって思ったんだ。
ずっと誰にも触れさせたくないって思ったんだ・・・。

 

 

 

 

 


「ああっ!」

響き渡る健の高い声。

「井ノ原くん!!」

椅子から立ち上がり俺の眠るベッドを指差す。
その声につられて、剛もこっちを見る。
部屋の反対側の隅に居た岡田もゆっくりと顔をこちらへと向けた。


「起きたのっ?!」

「・・・あぁ。」

笑顔で駆け寄ってくる健と剛。
そして、その後ろから静かについてくる岡田。


「よかったぁ!井ノ原くんいないとつまんないもんねぇ。ね、剛?」
「おぅ。」
「岡田もだよねぇ?」
「う、うん。」
「あ?おまえなんか返事ぎこちなくね?つか、思ってねぇとか?」
「そ、そんなことないよ。変なこと言うなよ剛くん!」
「あー、でも有り得るかもねー。」
「有り得へんって!健くんまで何言ってるんだよ?!」
「あーやしー。」
「マジ怪しい岡田。やべぇよ。」
「怪しくないわっ!」

 

相変わらずな痴話喧嘩。
そんな3人を穏やかに見守る坂本くんと長野くん。
長野くんに至っては俺より先に林檎食ってたけどね・・・・。
だけど、これがきっといつもの俺たち6人の関係なんだろうな。きっとね・・・・。

 

「岡田はさぁ、井ノ原くんのことウザイとかって思ってたんじゃない?」
「思ってへんわっ!」
「いーや、ぜってー思ってたね。顔に書いてあるぜ?おまえ。」
「書いてへんて!」
「うわぁ、岡田って冷酷非道・・・。」
「つめてぇ奴・・・。」
「違うわっ!勝手に決めんなぁ!」


最近いつも寡黙な岡田がターゲットになってる。
さっきまで一緒にいた翼の生えた3人も、こんな感じだったなぁなんて思い出す。
またいつか逢えたら・・なんてバカなことも思ったりする。
・・・だけど。

 

 

 

 


だけど、俺はここにいる。


2005年の5月にいるんだ。

 

心の糸”が再び巡り会わせてくれた仲間と一緒にここにいるんだ。

 

 


昔からずっと一緒に頑張ってきた坂本くんと長野くん。


そして、翼なんてない、剛と健と岡田と一緒にここにいるんだ。

 

 

 

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最後まで読んで頂きましてありがとうございました。

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、2005年とはV6のデビュー10周年イヤーです。その年の5月に公開しています。

そして、その年の坂本くんと健くんのお誕生日の合同お祝いとしてこのお話の番外編を書くつもりでした。

このお話の本編でも出て来ている片思いの23歳坂本昌行に会いに行った3人の天使のお話です。

結局構想だけで書けないまま時が過ぎてしまったんですけど・・・

それから10年。20周年イヤーにその番外編書いてみるのも面白いかもしれないかなー・・なんて(笑)