UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

長編について。

こんにちは。

拙いブログに遊びに来て下さる方々に感謝申し上げますm(__)m

 

さて、少しずつですがお話を公開しています。

そんな中、1話完結ではなく数話続く長編物も少しずつ公開して行こうかと思っております。

もともと、長編から書き始めていたので私のルーツはここにある!ということで。

書き終えている長編は5話あります。

メンバー6人ですが5話・・・。

長野くん以外の5人のオハナシです。

※ちなみに筆者は96年より長野くんファンです。

 

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君に逢えた12月

岡田くん主人公のお話。

私が一番初めに書いたV6メンバーのお話であり、一番長いお話でもあります。

2001年の冬のコンサートにて岡田くんが弾き語りをした曲、”君に逢えた12月”を聴いて、そのサビが頭に残っていたことから膨らんだお話。

Kinki Kidsの剛くんが岡田くんをイメージして作ってくれた曲だったということで歌詞の内容を勝手に岡田くんの恋愛に置き換えたという訳です。

歌詞は全部覚えてるわけがないのですが、印象に残っていたフレーズだけでもお話にするには十分でした。

書いたのは2002年ですが、お話の中の岡田くんは2000年の12月から・・という設定ですので年齢的には20歳ですね。若い。

お相手はちょっとした秘密がある年上の女性です。

 

 

愛しい人

 剛くん主人公のお話。

ふたつ目に書いたお話です。

2001年の2月にV6が初めて台湾にコンサートに行きました。

もれなく私も行ったんですけど、その時に現地のファンの子達を見ていろいろ思う事があって。

私は彼らと同じ日本人で同じ言葉をしゃべって、同じ国で暮らして、テレビや雑誌で簡単に目にすることが出来るけど、彼女達はメンバーに会うには日本までコンサートに行かなきゃならないし、彼らの出ているものを手に入れることも大変ですよね。今と違って当時はもっと大変だったと思うし。彼女達は日本語も堪能で、メンバーが話す日本語も理解してる子が多かったように思います。

いろんな意味で私は恵まれてるんだなって感じたわけですよ。

そんな台湾コンサートがきっかけになって浮かんだお話。

剛くんのお相手は台湾人の女の子です。

 

 

Eternal Wind君といた夏

イノッチ主人公のお話。

2003年に書きました。2003年に私はワーホリでオーストラリアに行っていたんですけど、その行きの飛行機とかでふと書き始めてみたりしたお話です。書きあげたのは帰国後です。

イノッチは2003年に生きてるんですが、お話の中のイノッチは1998年を生きてます。

2003年のイノッチが1998年の事を思い出している設定です。

お話の中に出てくる「舞台」は初の座長舞台「リボンの騎士」です。

いつも明るいイノッチが実は悲しい思いを抱えているとしたら・・・?という閃きから書き始めたお話なので内容的にはハッピーエンドでは無いですが、私的には一番思い入れがある好きなお話だったりします。

数年ぶりに読み返してもやっぱり一番好きかなと思えます。

イノッチのお相手は一つ年上の女性です。

 

 

PUNCH-DRINKER

 健くん主人公のお話。

もともとは短い1話のお話のつもりで書き始めたのが収まらなくて長くなってしまったので短めの長編です。

タイトルは「殴る酒のみ」いわゆる「酒乱」って感じの意味合いを込めてます(笑)

当時、韓国映画の「猟奇的な彼女」が人気で、私も観たんですけど、その映画の彼女が印象に残っていたっていうのもあってそんな感じの凶暴な女の子と健くんを会わせてみました。

基本、私の書いた長編は若干暗くて悲しい雰囲気が主流なんですけど、このお話に限っては全く悲しくもなく、健くんに申し訳ないほどにコメディだったりします^^;

お相手は健くんの部屋のお隣に住む年上の女性です。

 

 

I WISH~星に願いを~

坂本くん主人公のお話。

私にとっての坂本くんは、かっこよくて男らしい頼りになる大人の男の人だったんですよね。

そして私、坂本くんと言ったら「コバルトブルー」と言うほどにこの曲が大好きです。そして、彼の手も好きです。大きくて細くもなく太くごつごつしてるでもない指とか手のひらとか全部。

そういう私の好きをポイントに使ったお話です。

ただ、坂本くんが主人公ではありますがお話自体はお相手の女性と彼女の妹さんの目線だけで進んでいきます。

どうしても坂本くんの長編が書きたくて短期間で書いたお話なので若干強引だったりするのが残念ですけど、カッコイイ坂本くんが書けたと思っていたりします(自己満)

お相手は坂本くんより年下の女性です。あえて年齢設定はしてません。

 

 

 

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この5本のお話を今後順番に少しずつ公開させて頂きます。

合間に短編も挟みながらなので、すぐには終わることは無いでしょうけど・・・。

 

そして、もう一編書き途中の長編のお話があります。

 

「forever more」という剛くん主人公のお話。

途中で終わっているので最後がどんな終わり方にしようとしてたのか思いだせないんですけど、そのうち書き足して完結させてあげたいなーと思っています。

 

 

December 10th.

 

December 10th.

 

 

 

 

別れても、時が過ぎても、ずっと忘れられない人はいますか・・・・・・・・・?

 

 

 


「・・・う・・げほっっ・・・っっは・・・っっ・・・・・・・。」


歳の瀬も押し迫った12月10日。
私は柄にもなく部屋の大掃除なんかを始めていた。

だけど、それは無謀にも近く、日頃からたいして綺麗にしていない私の部屋は
埃やらガラクタやらが出るは出るは・・・。
ま、これは自業自得ってやつだから、諦めて続けるしかないのだけれど・・・。

それにしても・・・ねぇ。
この歳の瀬に自分の部屋掃除してて咳込んでるような32歳、しかも女ってどうなのよ?
だから未だにひとりなのよ。って親に言われるんだろうね・・・。
はぁ。


「ん?・・・・何この箱・・・・・?」

押入れの隅から出てきた小さなダンボール箱。
だいぶ年期が入ってるらしく、その箱はかなり埃まみれで薄汚れていた。
私は掃除する手を休め、何気にその箱をあけてみる。


「・・・あ・・・・・・・・・・。」

中からは赤いラインのはいった、フルフェイスのバイクのヘルメット。

これは・・・。

記憶が一気にリバースされる。
行き付く先は、12年前の夏。20歳の夏・・・・・。


私とあいつとは、専門学校の同級生だった。
とくに目立つわけじゃない私は、男子生徒となんて話すことなんて滅多になかった。
だけど、あいつとだけはよく分からないけど話せた。
家が近いって事もあって、よく一緒に帰ったりもしてた。
あいつが専門学校へ入る前、高校へ通いながら芸能活動してたって話も聞いた。
一緒にいると楽しかった。
なんだか分からないけど、落ちついた気分になれた。

気付いたら・・・好きになってた・・・。

このヘルメットは、あいつが私にくれた20歳の誕生日プレゼント。
最高に幸せな言葉と一緒に
私にくれた誕生日プレゼント。
「一緒にふたりが好きな湘南の海を見に行こう。」ってあいつがくれた
私専用のヘルメット・・・。

幸せだったな。
あいつの後ろに乗って見に行った湘南の海は、今でも思い出せる。

だけど・・・。

その幸せ壊したのは私なんだ。
ほんの小さなことだったのに。今思えば全然たいしたことなんかじゃないのに。
あの頃の私には許すことが出来なくて
一方的に別れを切り出してた。
ただ、『私の親友とサッカー観に行った。』っていうだけなのにね。

 


別れても忘れられないのは、今でも思い出すと切ないのは
自分が悪いって分かっているから。単なるワガママだったって後悔してるから・・・・・・・・・・・

 


「捨てにいこ・・・。」


思い出立ち切るためには、そういう”忘れ形見”はとっておいちゃいけない。
私は小さなダンボールと一緒に近くのゴミ捨て場へと向かった。

だけど変な話。
ゴミ捨て場でいざ捨てるときになってみると、イマイチ勇気がなくなる。
捨てるっていうことは・・・思い出までなくしてしまいそうで・・・。
もう12年も前のことなのに、なんだか吹っ切れないでいる自分がいた。

なんて未練たらしいんだろ、私って・・・。持ってたって・・・意味ないんだから・・・。

 

「それ、捨てちゃうんですか?」

ため息混じりに小さなダンボールを置きかけた時、背後から尋ねる声がした。
私は、その声に振りかえる。


「・・・・・・・・・・・・・。」


ウソ・・・・。


「・・・・・・・・・・・・・。」


驚きのあまり言葉が出ない。
だって
その声は、”あいつ”・・・・私の忘れられない思い出の主、”長野博”だったから。


「久しぶり。」
「・・・・・・・・長野・・・・。」
「それヘルメットだろ?」
「・・・・・うん。」
「捨てちゃうんだ?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「もったいないなぁ。それさ、高いのに?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「まだ使うことあるかもしれないじゃん。」
「・・・ないよ。・・だって私・・・バイク乗らないし・・・。」
「・・・そっか。」
「・・・・・・・うん。」


『久しぶり。』
彼にとってはそうだろう。卒業以来会っていないんだから。
だけど、私は長野の活躍を知ってる。だって・・・テレビでいつも見てるから。


「おまえさ、バイクの免許とってないんだ?」
「え?」
「取る取る言ってたのに。結局挫折?」
「な、そういう言い方ないじゃない。私だって・・・いろいろ・・いそがしかった・・・のよ。」
「あはは、ごめん、ごめん。だけどさ、それ・・・まだ持ってたんだ?」
「え・・?」
「それさ、俺があげたやつでしょ?専門学校ん時に。」
「・・・・・・・・うん・・・。」
「10年以上前だろ?凄いな、おまえ。」
「べ、べつに凄くないよ。だってさっきまで・・気付かなかったんだもん。」
「ん?何それ。」
「・・・・・・・・・押入れのすみに眠ってた。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「長野?」
「おまえさ・・・・・・・・。」
「な、何?」
「そういう無頓着なとこ全然変わってない。」
「ちょっっ・・失礼ね!!」


長野だって変わってなかった。
屈託ない笑顔で話しかけてくる。
だけど、私には少しそれが切なくもあった。
だってそれは、彼の中で私は、もう”あの頃の私”じゃなくて、”彼女”じゃなくて
単なる”昔の彼女”っていうだけの存在ってことだから。
もしかしたら、ただの”昔の同級生”かもしれない。

思い出が鮮やかなのは私だけ。・・・忘れられないのは・・・・私だけ・・・。

 

「ねぇ。」
「え?」
「どっちの手に入ってるか?」
「・・・は?何突然・・・。」
「いいから。どっち?」
「・・・・・・・・・。」
「どっち?」
「・・・・じゃぁ・・・・こっち。」


私は”右手”を指した。

その答えは簡単だった。
だって、長野はいつもそうだったから。
私に答えを求めるときは、いつも”右手”に何かを忍ばせていたから・・・・。


「あ、はは・・当たり。」

長野はそう言いながら、そっと右の手のひらを開けた。

「・・・・カギ?」
「うん。」
「何の・・・・あ、もしかして・・・バイク?」
「正解。」


子供のような笑顔を向ける。

「・・・・・・・・・・・・。」
「さ、海行こう。」
「は?!」
「は?!、じゃなくって海。・・あ、俺余分なヘルメット持ってないから、それかぶって。」
「・・・へ?」

長野は私が捨てに来た”小さなダンボール”を指差した。

「・・・・・・・・・・・。」

何がどうなっているのか、イマイチ状況がつかめない。
どういうこと?
海って・・・。
どういうこと・・・・?

「ほら、早く。早くしないと日が暮れちゃうよ?」
「・・・ちょっ・・・っっ・・。」

長野はそう言うやいなや、私の手をつかみ歩き出す。

「ちょっと、痛いよ。ていうか・・・引っ張んないでよ。」
「じゃぁ、さっさと歩く。」

人差し指をおでこに軽く突き刺した。

「いた。やめてよ。」
「いちいち文句言わないの。」

この人・・・・。

なんだか長野は昔に比べて強気になった気がする。
今はなんだか妙に・・・・男らしい・・・。

そうだよね、だって、そこには12年もの月日が流れてるんだもんね・・・・・・・・。

 

「そうだ。」

何かを思い出したように、長野は急に止まった。
そうすれば、必然的に私は彼の背中にぶつかってしまうわけで・・・・。


「いたっっ!ちょっと、急に止まらないでよ!!!」
「あ、ごめん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


その笑顔は止めてよ。
何も言えなくなるじゃないの・・・・・。


「ねぇ。」
「え?」
「どっちの手に入ってるか?」
「は??また?!」
「そう。」
「何なのよ今度は?」
「いいから。文句言わないで選ぶ。」
「・・・・・・・・分かったわよ。」
「で、どっち?」
「・・・じゃぁ・・・・・・・・こっち。」


私はやっぱり”右手”を指した。


「はは・・また当たりだ。」

長野はそう言って、笑いながら、右の手のひらを開けた。


「・・・・・・・・指輪?」
「そう。」
「・・・・・・何で?」
「・・・今日さ、何の日か覚えてる?」
「今日?」


今日は12月10日。
クリスマスはだいぶ先だし、誰かの誕生日ってわけでもないはず・・・。
何?

「・・・・・・・・・・・・。」
「わかんない?」
「・・・・・うん。思いつかない。」
「そっか。」
「・…・・…・何?」
「俺が一番傷ついた日。」
「・・・え?」
「おまえが俺に、別れる。って宣言した日だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」


そう・・・・だった・・?
私、そんなこと覚えてない・・・・。
長野は・・・覚えてたの?・・・・ずっと忘れてなかったの・・・・・?


「この指輪さ、その年のクリスマスにあげるつもりだったんだ。・・・だけど・・・ね?」
「・・・・・・・・・・・・・。」

長野は意地悪そうな笑顔を向けた。
私は・・・何も言えなかった。


「悪いけどさ、責任とってもらってくんない?」
「え?!」
「行き場ないから。捨てんのもったいないしさ。」
「・・・・・・でも・・。」
「いるの?いらないの?」
「・・・・・・・・・・・。」
「どっち?」
「・・・・・・・・い・・る。」
「よろしい。」


なんだか意味分からないけど・・・。
12年経った今、いきなり指輪なんかもらったってどうしていいのか分からないけど・・・・。
だけど・・・・・。
何故か、妙に嬉しい気持ちでいっぱいの私がそこには居た。


「ねぇ・・・はめてくれないんだ?」
「あ?何言ってんの。甘えてないで自分ではめなさい。」
「・・・だって、ヘルメット持っててはめられないんだもん。」
「・・・・・・・・仕方ないなぁ。」


長野は、子供をあやすお父さんみたいな優しい顔をして笑った。
そして、そっと私の右手の薬指に、その指輪をはめてくれた。


「・・・ありがとう。」
「いえいえ。」

 

!?・・・・・・っ?!・・・なっっ?!・・・・なに・・?!?


「ははは。すごい顔してるよ?」
「だ、だって・・・。」
「いいじゃん。これくらいは・・・ねぇ?」
「・・・・・・・・・・。」


いきなりホッペにキスされた・・・・・・・・・。


よ、よくないわよ、全然。
これくらいじゃないわよ、全然。
顔から火が出そう。
うわぁん・・・。どうしよう。まともに顔が見れないよ・・・・・。
バカぁ・・・。

 


「さ、行くよ。早くしないと日が暮れちゃう。」


彼はポケットに両手を突っ込んで歩き出す。


「うん。」


私はその後を小走りで追いかける。

 


12年前の12月10日。私が彼に別れを切り出した日。

別れても、時が過ぎても、ずっと忘れられなかったのは、きっと誰よりも大切な人だったから。

 

今年の12月10日。12年ぶりに再会した日。

作ることが出来なかった12年間分の思い出は、今日からふたりで作ればいい。

 

この日から始まる、ふたりの新しい思い出を・・・・・・・。

 

 

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長野くんでした。

6人それぞれのお話を公開しましたが、最後は長野くんです。

筆者、実は96年からV6ファンですけど、ずっと長野くんファンです。

普通、一番好きな人のお話が書きやすいと思うんですけど、長野くんに限っては書けない書けない!!

このお話が初長野くんだったんですが、そこに至るまで他のメンバーは既に結構いろいろ書いていたというね(笑)

そして、初めて書いてもう書かない宣言もしてました当時^^;その後数話は書きましたけども微妙~~(笑)

 

長野くんは、長い間忘れられない様な人が居て・・とか、好きな人には男らしく思いをぶつけて行くんだろうとか私なりの勝手な印象があってね。

そんなことを混ぜ込んだお話でありました。

彼女が長野くんを「長野」って呼ぶのが実はツボなのです^^

 

雷が落ちる

 

雷が落ちる

 

 

 

 

 

俺が欲しいもの。


超高級外国産スポーツカー。

・・・いや、違う。

海外に豪邸。

・・・これも違う。

右に出るもの無しの地位と名声。

・・・でも、ねぇ。

幸せな家庭。

・・・いずれ欲しいが、今じゃねぇ。


じゃ、何だ?

特にこれと言って欲しいもんなんてない。

なのにやけにソワソワしてる、俺ん中が。

何だ?俺が欲しいもんって。


・・・何なんだ?

 

 

コンサート後の俺たちV6の控え室。
未だ興奮冷めやらぬメンバーがはしゃぐ中、俺はひとり考えてた。
MCで突然ふられた「今一番欲しいもの」の答え。

 

「お疲れ。」

軽く背中を叩かれた感触。

「うん。お疲れ。」

いつもとなんら変わらない笑顔がそこにはあった。

「今日も頑張ったな、剛。」

あの人は優しく俺をねぎらう。

 

だけど・・・・・。

 

今日の俺は散々だったよ?

立ち位置も振りもかなり間違ったよ?

 

なのに・・・・・。


何で怒らないんだよ。

何で「なにやってんだ!しっかりしろ!」って怒鳴んないんだよ。

何で笑ってんだよ。

 

何でだよ・・・・・。

 

「俺最悪だったよ?」

口を尖らせて、まるで子供みたいな態度を見せる俺が居た。

「そっか?あれがおまえらしいんじゃねぇの?」

あの人は、やっぱり変わらない顔して笑ってた。


「・・・・・・・・・。」


・・・・何で笑うんだよ・・・。

 

 

モヤモヤモヤモヤ葛藤してた俺ん中の何かが急に弾けた。


そしたら、何もかもが一本の糸に繋がった。

 

・・・俺、分かっちまったよ。さっきの質問の答え。

ソワソワしてた訳も。

 

 

俺が欲しいもの。

 

それは、どんなに金持ちの奴にだって買えやしない。

この世にたった一人のあの人が、俺にくれるもの。

 

「剛!なにやってんだ!しっかりしろ!」

 

そう言って、俺を叱り飛ばす大きな声と怖い顔。

 

 

そういや最近もらってない。

今日はもらえると思ってたのに。

・・・もらえなかった。

 

俺が”何より”欲しいもの。

 


なんだか淋しい。

なんだか物足りない。

 


もう雷は落ちないのかな?

 


たまには落としてよ。

 


俺がほんとにダメだった時はさ。

 

 

・・・・ね、坂本くん。

 

 

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剛くんでした。

剛くん単独のお話の1発目は恋愛ものじゃないというね(笑)

実は、剛くんのお話は長編なども含めて一番たくさんあります。理由は分からないけど浮かびやすいのかなー?

 

で、このお話が浮かんだ理由として、昔(このお話を書いた当時よりちょっと前のこと)坂本くんが雑誌で「カミセンが成長した」という様な事を話していたんですね。

その時に、「最近坂本くんに怒られなくて寂しい。って剛が言うんです(笑)」みたいなことを言ってて。

それ読んだ時、デビュー当時はうざいと思ってた坂本くんの説教も時が過ぎたら懐かしく良い思い出になってるんだな。そう思える程の良い関係性になれてるんだなと嬉しくなったんですよね~。

ふたりの距離感がとても好きな私です。

 

 

翼在りし者たち

 

このお話は、数話続く長編です。

(私が書いたその他の長編に比べると比較的短く中編程度ですが)

公開当時はイノッチのお誕生日記念作でした。

 

そして、今までの恋愛ものとは少し離れて現実には起こり得ないことがメインになったお話です。

イノッチのお誕生日記念だったので主人公はイノッチ。

そのイノッチと関わるキャラクターにカミセン。

でも、カミセンはカミセンだけどカミセンではありません。

(最終的にはメンバー全員登場します。)

 

テーマは「絆」です。

 

興味を持って頂けましたら、幸いです^^

 

 

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上弦の月

 

上弦の月

 

 

 

 

 

見上げる夜空には、眩しく光る上弦の月・・・・・・・・

 

 


最近残業続きで身体が悲鳴を上げてる。
この歳になってこうも働き詰めるとは思いもしてなかったから、はっきり言って辛い。
片手で肩を軽く叩きながら、会社のビルの入り口を後にした。


「ねぇ、ねぇ、綾!!」

突然、隣りを歩いてた同僚の麻衣があたしの腕を引っ張った。

「な、何よ突然?!」
「いいからちょっと、あれ見てよ!」
「へ?」
「あそこ。超いい男が立ってる~!!」
「・・はぁ?」

”いい男マニア”の麻衣は、街中でもすれ違う男の顔ばかり見ていた。
でも、麻衣の言う”いい男”には、たいしていい男がいないのもあたしは知ってる。
「またかよ・・。」的な気持ちを持ちつつも、麻衣の指差す方へと視線を移した。


・・・確かになんとなくいい男・・・。

「ねぇねぇ、どうどう??綾、どう??」
「う、うん・・まぁ。なかなかなんじゃない?」
「だよねぇ?」
「誰か待ってんのかなぁ?こんな会社の前でさ?ねぇ?」
「・・さぁ。そこまでは・・・。」

興奮する麻衣を余所に、あたしはかなり冷めていた。
別に、その人がいい男だったからといって特に何があったりするわけじゃないしね。
軽くため息をつきながら、チラリと再びその男の方を見てみた。

・・・・・ん?!

「ちょ、ちょっと綾!!あの人こっちに手振ってる??」
「・・・う、うん・・。」
「やだぁ、どうしよう!ねぇ、これって出逢いかなぁ?!ねぇ、綾?」
「・・う、うん・・・。」

・・・・ていうか、あれ・・。あれって・・もしや・・。

「ちょっと、どうしよう。あたしだったらどうしよう?ねぇ、綾!ねぇってば。」
「う・・・うん・・。」
「ちょっと綾、聞いてんの?!綾?」
「あ、あのさ、あたし・・・あっちから・・・・」
「へ?」
「やっぱ、あたしあっち側から帰る・・・・・・。」
「ちょっと、綾?!何よ、どしたのよ?ねぇ?」
「・・じゃ・・。」

相変わらず興奮する麻衣の話を80%以上は聞き流して、あたしが背を向けかけたその瞬間。
嫌な予感は大的中。


「綾さん!」

その”いい男”は、大きな声であたしの名を呼んだ。

「へっ??!!・・あ、綾?」

隣りで目を丸くする麻衣。
麻衣はあたしと彼を早い瞬きを繰り返しながら、交互に見てた。

「し、知り合いなの?!」

尋ねる麻衣に、あたしは何ともいえない顔で苦笑い。
そして、「・・さぁ?」と軽く惚けてみたりした。

「でもさ、名前呼ばれてなかった?綾って。ねぇ?」
「き、気のせいじゃない?」
「でもさぁ、確かに・・・・・。」

怪訝な顔をする麻衣。必死に誤魔化すあたし。
そんなあたし達の関係に、追い討ちをかけるように”いい男”は再びあたしの名を呼んだ。

「綾さん!こっち!」

そして、あたしに向かってこれでもかと言わんばかりに大きく手を振る。

・・・あぁ・・。もうダメじゃん・・。

うな垂れるあたし。
やっぱり隣りで目を丸くする麻衣。
あたしは、麻衣の言葉を待たずして、”いい男”へと向かって走り出した。
途中チラッと振りかえったら、麻衣がその場に固まっていた。
・・・あぁ、きっと明日は質問攻めだろう。
一気に気が重くなった。

 

 

 

「綾さん。お疲れさま。」
「な、何やってんのよっ!」
「え?綾さん待ってたんだよ。」
「待ってたってねぇ、ここが何処だか分かってんの?!」
「綾さんの会社の前。」
「違うわよっ!」
「え、だってそうやん。そこで綾さん働いてんのやろ?」
「そ、そうだけど、・・っていうか、違うのよ!ここはね、新宿よ?しかも都庁前よ?」
「うん。知ってるよ。」
「知ってない!」
「なんやねん?何怒ってんねん。」
「あなた自分が誰だかわかってんの?!」
「そんなん当たり前やん。・・岡田准一。」
「違うわよッ!!」
「違わないって。俺は岡田・・・」
「そうだけど、違うの!!」

・・・そうだけど、違うのよ。
岡田くんは岡田准一だけど、ただの岡田准一じゃなくて・・・。だから・・・・。

「なんだっていうねん・・。」
「だから、こんな人が多いところでもしものことがあったら・・・とか・・。」
「綾さん、心配してくれてんの?」
「ち、違うっ!」
「優しいなぁ、綾さん。だけど大丈夫。俺変装してるし。」
「へ、変装って・・・。」

彼の言う変装とは、なんともショボイもので、目深に被ったキャスケット”だけ”。

「な?」
「何処が変装よっっ!!」
「え?」
「思いきり目立つっ!!!!!」

思わず出た大きな声に、咄嗟に口を覆った。
周囲の視線が一斉にこちらへと集中する。

「綾さん、声大きすぎ・・・。」
「ご、ごめん・・。」

あたし達は肩をすぼめた。

「とりあえず、行くわよ。」
「何処へ?」
「いいからここを離れるのよっ!」

そして、あたしは腕を絡ませるように彼の腕を掴んで、大股で歩き出す。

「あ、綾さん・・?」
「いいから、早く!」
「で、でもさ。」
「こんなところにいたら目立つでしょ?!」
「だけど綾さん、俺ら今、腕組んでんで?」
「へっっ?!」

・・・い、い、言われてみればっ!!
瞬時に絡めていた腕を解き、彼の傍から一歩横へと飛んで逃げた。

「おもろいな、綾さん。」
「お、おもしろくないわよ。」
「そういうとこ可愛いな。」
「なっ、何言ってんのよっ!」

ニコニコ笑ってる。
・・こ、これじゃ、どっちが年上だか分からないわ・・・。
完璧に向こうが上手・・・・・。

「なぁ、綾さん?」
「え、え?」
「今日はさ、実は迎えに来てん。」
「は?」
「連れてきたいとこあってさ。」
「連れてきたいとこ?」
「そ。だからさ、ちょっと付き合ってほしいねん。」
「な、なんでよ?急に連れて行きたいなんて・・・。」
「ん?だってさ、今日は11月17日やろ?」
「へ?」
「綾さんの誕生日やろ?」
「・・・あ。」
「な?」

目深に被ったキャスケットの下から覗く優しい目にドキンとした。
自分自身でさえも忘れていた誕生日なのに。
覚えていてくれたなんて。あたしなんかよりもずっと忙しい人なのに。
それなのに・・・・・・。

 

 

 

 


彼の運転する車で連れてこられたのは、東京から2時間以上も離れた山奥。
こんな山奥にいったい何があるっていうんだ?!って言わずにはいられないほどの場所。


「ここやねん。」

口の端を微かに上げて得意げな笑顔を覗かせた彼と、疲れきったあたしの目の前には
並木道が長く続いてた。

「ここ?」
「そ。」
「ここって・・・」
「ん?」
「あのぉ・・・。」

”特に何があるの?”って思わず出かかった言葉をぐっとこらえた。
彼はそんなあたしの様子に気づいたのか、クスっと笑って夜空を指差した。

「なぁ、綾さん空見て。」
「え?」
「あれ、あの月。」
「月?」
「そ。あれな、上弦の月やねんって。今日は暦から行くとそうらしいねん。」
「へぇ・・・。」
「綾さん”上弦の月”好きやったろ?俺らの曲の。」
「あぁ・・。」
「ここさ、凄い月綺麗に見えるからな。」
「・・・・・・。」

彼は、ゆっくりと並木道を歩き出す。
あたしも、ゆっくりと彼の後を追うように歩き出した。
・・・確かに月が綺麗だった。
両脇に続く緑の木々の隙間から覗く月が、ちょうど並木道をほのかに照らして
とても幻想的な雰囲気をかもし出していた。

 


「なぁ。綾さん。」

不意に彼が立ち止まる。
そして、あたしに向かって右手を差し出した。

「何?」
「手繋ごう。」
「はっ?!」
「手繋いで歩こ。」

優しく微笑みながら見つめる瞳が、とんでもないくらいに綺麗だった。
綺麗過ぎてひっくり返りそうだった。
・・・心臓が恐ろしいほどの早さでドキドキと鳴っていた。


「・・ななな、なに言ってんの?」
「え?」
「つ、繋ぐわけないでしょう。」
「何で?」
「な、何でって当たり前じゃない。・・だだだ、だって恋人でもないのに・・。」
「・・・・・・。」

彼は、微かに微笑み差し出していた手を引っ込めて、再び歩き出す
・・・何を急に・・・。どうして・・・?

 

 


見上げる夜空には、眩しく光る上弦の月・・・・・・・・・

 

 


「綾さん、ここ立ってみて。」

「・・ここ?」

彼に言われるままに立った場所は、ちょうど並木道の折り返し地点。
行きに見えた景色とは違って、今度は街明かりが目に映る。
・・・この景色もとても美しい。


「・・・わぁ・・綺麗。」

「やろ?」

得意げに微笑む彼は、やっぱりゆっくりと並木道を戻り始めた。
あたしも、彼の後を追うように、やっぱりゆっくりと戻り始める。
・・・が、その瞬間不意に”ある物”が目に飛び込んでくる。

 

”Lover's Avenue (恋人達の並木道)”


・・・・へっ?!・・こ、恋人っ・・っ!?


あたしの目に飛び込んできたもの。
それは、並木道の隅に立てられていた古ぼけた看板。
そして、そこにはこんなことまで書いてあり、更にあたしを驚かせた。

”この並木道は、愛し合う恋人達のための愛の並木道です。
 この場所を手を繋いで歩いたふたりは、永遠に一緒に、そして
 ふたりで幸せに暮らして行けるという言い伝えがあります。”


・・・な、何ですと・・・?!

何気なく先を行く彼の背中を見つめた。
・・・岡田くんは知ってるんだろうか・・・?ここが”そういう”場所だって・・・。
愛し合う恋人のための場所だって知って・・・るの・・?

 

「綾さん?」

彼があたしを振りかえる。

「どうしたの?」

「う、うん・・。今行く。」

あたしは、彼の元へと駆け足で向かう。


「どうしたん?」
「ううん、何でも。」
「ボケっとしちゃって。お腹でも減った?」
「・・ちょっと!そんなわけないでしょっ!!」
「はは。冗談やって。」
「・・冗談って真顔で言うもんじゃないんですけど・・・。」

プッと吹き出して、少しうつむき加減に笑う。
この人の仕草は、なんだってこう、いつもあたしをドキドキさせるんだろう。
あたしは、なんだっていつもこうやってバカみたいにドキドキしてるんだろう。
・・・悔しいくらいに。

 

「なぁ、綾さん。」

「え?」

彼はポケットから何やら小さな箱を取り出した。

「はい、プレゼント。」

「え?あたしに・・?」

「当たり前やん。誕生日やろ?」

「・・う、うん・・。」

あたしは、「ありがとう。」とその箱を受け取った。
彼は、「開けてみてよ。」と促す。あたしは、促されるままにその包みを開けた。

「わ・・ペンダント・・。」

「うん。」

「・・・かわいい。」

「気に入った?」

「うん。・・ありがとう。」

「使ってな。」

「うん。・・必ず。」

 

 

あたしは、ペンダントをバッグへとしまい、また並木道を戻りかけた。
だけど彼はその場に立ち止まったまま動こうとしない。


「岡田くん?」

「・・え?」

「どうかした?」


心ここに在らずの表情をしていた。


「あのさ・・・。」

「・・何?」


突然真剣な表情になる。
あたしの心臓が、またドキドキと音を立て始めた。


「・・・あと10分くらいここに居ってもいいかな?」

「・・・え・・?」

 

時は11月17日、23時50分。


「・・・どうして?」
「うん・・・。」
「岡田くん?」
「・・あのさ、今日って綾さんの誕生日やろ?」
「うん。」
「明日はさ、俺の誕生日やねん。」
「・・・あ。」

・・・そういうえば、そうだった。
あたし達の誕生日って、続いてたんだった・・・・・。

「だからさ、俺の誕生日まで一緒にいて欲しいねん。」
「・・・・・。」
「・・ダメ?」
「・・・・・・。」
「綾さん?」
「・・・いいよ。」

彼は少し照れたように微笑みながら、「ありがとう。」と呟く。
・・・やっぱりこの人の仕草は綺麗だ。ドキドキする。
そして、・・・こんなにも愛しい・・・・・。

 

 

 

見上げる夜空には、眩しく光る上弦の月・・・・・・・・

 

 

 


時計の針が深夜0時を回って、日付が18日へと変わる。


「お誕生日おめでとう。」

「ありがとう。」

あたしの言葉に嬉しそうに微笑む彼。
その彼が、またあたしに向かって突然右手を差し出した。

「・・・何?」
「ん?」
「何?この右手は?」
「ん・・?」

ニヤニヤと悪戯な笑顔を浮かべる。

「ねぇ、もしやプレゼントねだってる・・とか?」

相変わらずニヤニヤと悪戯な笑顔を浮かべたまま、彼は首を横に振った。

「・・じゃ、何・・・?」
「うん。」
「うん。じゃ分かりません。」
「綾さん。」
「はい?」
「手・・繋ごう。」
「はっ??」
「手、繋いで歩こう。」

・・・ちょ、ちょっと・・。何言って・・・・。

「な?」
「い、嫌よ。」
「何で?」
「何で・・と言われても・・・・。」
「理由がないならええやろ?」
「だ、ダメよ。」
「だから、何で?」
「だ、だって・・ここって・・・。」
「ん?」

・・・恋人達の並木道だよ・・?

「と、とにかくダメ。」
「訳わからんわ。」
「ダメと言ったらダメです。」
「・・・・・。」
「・・お、岡田くん?」
「・・・・・・。」
「・・・怒ってる?」
「・・・・いや。」
「・・でも・・顔がなんか違う・・けど・・・?」
「怒ってるっていうかショック。」
「え?」
「綾さん俺のこと嫌やねんなって。」
「へっ?!」
「手、繋ぐのも嫌なんやろ?」
「だ、だから・・。それは・・・・・・。」
「それは?」
「それは・・・その・・・。」
「何?」
「お、岡田くん?」
「ん?」
「ここが何処か知ってる・・よねぇ?」
「もちろん、知ってるよ。」
「・・どこ?」
「長野県やろ?」
「は?」
「長野県の中の山奥の月が綺麗な並木道。・・・やろ?」
「・・・・。」
「違うん?」
「い、いえ・・合ってます・・・。」

・・・この人・・知らないらしい・・・。
やっぱり天然なんだなって少しだけ可愛く思えたりした。
・・・それなら・・いっか。


「・・分かったよ。」
「へ?」
「手、繋いであげる。」
「ほんま?」
「うん。・・だって、誕生日だしね。あたし何もプレゼント用意してないしさ。」
「うん。」


彼は、あたしが差し出した左手を、右手で取った。
そして、きゅっと優しく握り締める。
繋がれた手からは、彼の暖かい温もりが伝わってくる。
と、同時にあたしのドキドキまでも伝わってしまうんじゃないかと少し不安になったりもした。
・・・でも・・・あったかいや。

 

「・・・これで永遠に一緒やな。」


・・・へ・・っ?!・・い、今何て・・・?!

「お、岡田くん・・?!」
「ん?」
「い、今・・・。」
「ん?」
「永遠がどうたらこうたら・・って・・・。」
「うん。」
「・・何て・・・?」
「ん?・・永遠に一緒やなって言った。」
「はっっ???」
「だってさ、ここ”恋人達の並木道”やで?手繋いで歩いたら永遠に一緒やねん。」
「しししししし・・・っ・・・。」
「綾さん、何めん玉まん丸にしてんねん。」
「・・知ってた・・の?」
「当たり前やろ?」
「だって・・さっき・・。」
「知らんフリした。つーか、知らんかったら連れてこないやろ、こんな山奥まで。」
「・・・・・。」

・・・・そうですね・・・。
ていうか、何て言うか・・・。身体の力が全部抜けた気分よ・・・?


彼はといえば、何事もなかったかのようにあたしの手を取ったまま並木道を歩く。

 


手を繋ぎ歩くふたりの上には、眩しく光る上弦の月・・・・・・・・

 

 

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岡田くんでした。

実はこのお話は公開するに当たり最後を変えています。

最後はもう少し長くて、タイトルも違いました。お題に沿って書いていたので最後が少し強引になっていて・・・しかも甘~い感じだったので止めちゃった(笑)

基本、恋いのお話とは言っても軽い感じがモットーなので^^

恋愛において一番ドキドキするのは好きな人と初めて手をつなぐ時なのではないかな?と若かりし頃を思い出し書いた訳ですよ(笑)

 

このお話の中の誕生日が繋がってるという部分だけは、実は私がモデルです。

私の誕生日は岡田くんの1日前なのでちょっと使ってみちゃいました。

 

東京下北物語

 

東京下北物語

 

 

 

今から俺が話すこの話。それは井ノ原のこのひとことから始まったんだ・・・・・・・・・・・・

 


「坂本くぅ~ん!」

ある日の仕事終わり。井ノ原が俺の名を叫びながら走り寄ってきた。

「何だよ?」
「今日さ、坂本くんこれで終わりだよね?」
「あぁ、そうだけど?」
「俺さぁ、急に仕事はいっちゃってさ・・・。」
「へぇ、そりゃ気の毒に。」
「つーか、気持ちこもってねぇよ。」
「ははは。そうかぁ?」
「そうだよ。・・で、坂本くんこの後予定ある?」
「いや、別にねぇけど?」
「あのさ・・・急で悪いんだけどちょっと頼まれて欲しいことあんだけど・・・・・。」
「あぁ、俺に出きることなら別に構わねぇけど?」
「ホントッ?!・・・これこれ、これなんだけどさぁ・・・。」

そう言うと、井ノ原はポケットから一枚の小さな紙切れを取り出した。

「これ。」

そして、それを俺の目の前に突き出す。

「・・・チケット?」
「そう。舞台なんだけどさぁ、今日の夜なんだよね。俺たぶん間に合わないからさぁ。」
「ふぅん・・・。」

俺はそのチケットを手に取り、その中身を確かめてみる。

「開演・・19時30分。・・東京下北物語?」
「そう。下北舞台の話でさ、なかなか評判なんだよねぇ。どう?ムリ?」
「うーん・・・。」
「俺さ、チケット代出すから。何なら夕飯代も。」
「おいおい、おまえ別にそこまでしなくてもいいって。」
「ダメ?」
「・・・別にかまわねぇよ。どうせ暇だしな。」
「マジで?!良かったぁ。サンキュー!」

井ノ原はホッと胸をなでおろしている様子。
正直あんまり俺好みの舞台じゃなさそうだったけど、そこまで頼まれたら・・・なぁ?

「あ、それでさ。もう一個。」
「何だよ?まだあんのかよ?」
「いや、これは頼みっていうか・・・同行者のことなんだけど。」
「同行者?」
「そう。俺が一緒に行くはずだった友達がさ、駅の近くで待ってるはずなんだよね。」
「はっ?!・・おい、俺ひとりじゃねぇのかよ?」
「・・実はさ、俺の友達が一緒。」
「・・・おまえなぁ・・。そういうことは先に言えよ。」
「つーかさ、言ったら坂本くん行ってくれなさそうじゃん?」
「当たりめぇだろ。俺が初対面苦手なの知ってんだろうが?」
「知ってるよ?・・・だから・・・ちょっと黙ってたんだよねぇ。」
「俺、やっぱ止めるわ。」
「あ、さっき行くって言ったじゃん?自分で言ったこと破るんだ?そうなんだ?」
「あのなぁ・・・。」
「あぁ~、坂本くんってそういう人だったんだ?普段俺らに説教してるくせに?へぇ~。」
「・・・・・・・・てめぇ。」

俺は結局初めの約束通りに舞台へと行くこととなった。
なんだかこれは、完璧に井ノ原に丸めこまれたように思えてならない。

「あ、坂本くん。全然心配しなくて平気。そいつさ、超が付くほどうるせぇから。」
「あぁ、そう・・・。」
「そうそう。だからね、坂本くんはしゃべんなくって平気だから。黙ってれば全然オッケー。」
「・・・・・・・・・。」
「俺だってねぇ、ほとんど喋る暇ないくらいの奴だから。もうね、マシンガン?」
「・・・へぇ・・・。」

つーか、それもどうかと思うがな・・・。
この井ノ原が喋る隙がないほどの奴なんだろ?・・・・・・・・・地獄だな・・・・。

 

俺は井ノ原からチケットを受け取り、奴がいつも待ち合わせてるという
”駅のそばのデカ看板。”とかいう物の前へと向かった。
下北ねぇ・・・最近あんま行ってねぇな。井ノ原にとっちゃぁ庭みたいなんだろうけどな・・・。

改札を抜け外へと出た俺は、井ノ原が言っていた”デカ看板”らしきものを発見した。

・・・・・・あれでいいんだよな・・?デカ看板なんて言う割にそれほどでかい訳でもねぇし。

そして、それへと近づき、そのまん前で井ノ原の言う”マシンガン友達”を待つことにした。

 

待つこと20分。
なんだかよく分からないが、俺の前を行ったり来たりしている子がひとり現れた。
肩まで伸びたストレートの黒髪がサラサラと冷たい冬の風になびいてる。

・・・・・・・・誰か待ってんのか?

暇なことも手伝ってか、俺は彼女の行動をこっそりと眺めていた。
腕時計に何度も目をやり、途中で立ち止まっては小さなため息。
そしてまた・・行ったり来たりの繰り返し。

・・・・・・すっぽかされた・・のか?


更に10分が経過した頃。
彼女は携帯を取りだし、誰かに電話をかけ始めた。きっと待ち合わせの相手だろう。
俺は何気にボーっとその様子を眺めていた。


「はぁぁぁぁっっ??!」

突然の大声。俺の心臓はドキンと1回大きく飛び跳ねた。

「何言ってんのよっ!ちょっと!!待ちなさいって!あんたねぇ!!!」

続けざまに彼女は電話の相手に噛み付かんばかりの勢いで、つっかかる。

「・・・っ・・ちょっ・・・。」

と思ったら、携帯を耳から離し呆然とした顔でしばしの間眺めていた。

・・・・・・・・・切られたな。かわいそうに。


彼女は何やらブツブツと文句を言いながら携帯をバッグの中へと押しこんだ。
そして、突然俺のほうを向いたかと思ったらズンズンとこっちへと歩いてきたのだ。

・・・・・・・へっ?!・・な、なんだよ・・。

でもって、俺の目の前に立ってこう言った。

「イノの・・・代役の方?」

・・・・・・・は、はい??

「さっきイノから聞きました。仕事で行けないって。・・・代わりの方・・・ですよねぇ?」

なんのことだか、さっぱり・・・?
彼女が言う”イノ”って言うのは井ノ原のことか・・・?

「イノの友達だっていう、舞台観に行ってくださる代わりの方・・ですよねぇ?」

イノが井ノ原ってぇことは・・・・・。
あいつが言ってた友達って、”マシンガン友達”ってぇのは・・・・・彼女っっ??!!
おいおい・・・聞いてねぇよ・・・・・・・。女だなんて・・・聞いてねぇぞ。

「違い・・・・ます?」
「え・・・?あ、い、いや。」
「代わりの方・・・です・・・か?」
「・・あぁ・・・はい。あいつに頼まれてきました。初めまして。」

俺はここまで来たら観念するかって気分で、掛けていたサングラスを外し挨拶した。


「・・!?ささささささささ・・っ坂本さんっっ?!?!」

すると、彼女は思いも寄らないほどの動揺を見せた。
それは、その様子を見た俺が逆に動揺するくらいのもんだった・・・。

「・・は、はい・・まぁ。」
「しししししししし・・知らなかった・・・・・。」
「え?・・あいつ・・・」・言わなかったんだ?」
「すすすすすすすす・・・すぐ電話切られちゃったから・・私・・・。」
「はは・・・そっか。」
「せせせせせせせ・・せっかち・・なんです・・・イノ・・・・・。」
「かもな・・・。」
「そそそそそそ・・それで・・どうして坂本さん・・・が?」
「ん?・・あいつのご指名。ま、たまたま俺が空いてたってことだと思うけど?」
「そそそそ・・そう・・ですか・・。」
「まぁ・・そんなとこ。」
「は・・はい・・。」


話してるうちに彼女の動揺もなんとなくだけど、少しずつ治まってきたみたいで、
俺たちは舞台の劇場へと向かうことにした。


「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」

さっきから彼女はうつむいて歩いたまんま。
”デカ看板”前で挨拶してからというもの、それからの10分はまるで無音。
ひとことすらも発しない。

・・・・・・・・おいおい、井ノ原・・・。マシンガンじゃなかったのかよ?無口じゃんかよ?
頼むよ・・・?このまま無言じゃ・・・息詰まるぞ・・・・?


仕方なく俺はきっかけを作るべく、彼女へと話しかけた。

「ねぇ?」
「は、はいっっっ?!」
「・・・・・・そんなびっくりしなくたって・・・。」
「あ、い、いや・・・すいません・・・。」
「いいよ、別に。」
「・・は、はい。」
「・・君とさ、井ノ原の出逢いって何?」
「へっ?」
「君と井ノ原が友達になったきっかけ。」
「あ、あぁ。・・・イノが・・彼氏の友達だったんです・・・前の。」
「へぇ・・・。」
「で、私も舞台好きだったし、イノもそうだったから・・話が合って。・・それからです。」
「どのくらい?」
「・・・・・かれこれ・・5年くらい・・です。」
「ふぅん・・長いね。」
「はい。」

5年の付き合いね・・・・。俺と井ノ原は・・・・・10年以上だな?

「坂本さん。」
「ん?」
「・・坂本さんとイノは・・・もう10年以上ですよね?」
「まぁな。」
「すごいですね。」
「だな。」
「私・・よく坂本さんの話とか・・聞きます。」
「へ?・・・どんな?・・それって・・・・・・・・・やばい話とか・・?」
「えっっ?!そそそそそそ・・そんなんじゃなくって・・・仕事の時とかの・・ことで・・す。」
「あー・・・・そうか。・・そうだよな。」
「はい。」

微妙だな。自分のいないトコで自分の話されてんのって。なんか。ははは・・・。

 


「ここです。」

そうこうしてるうちに、今日の舞台の劇場へと着いたらしい。
俺は彼女に付いて地下にあるその劇場へと入って行った。
そこは、かなり小さくてマジで”下北沢の小劇団”って雰囲気が漂ってるとこだった。
・・・・・井ノ原・・好きそうだな。ははは・・・。

席に座り、開演を待つ。
隣りの彼女は相変わらず無口だった。そういえば、彼女との会話ってここへ来るまでの道のりでの5分ほどのあれだけだ。
・・・つーか、どこがマシンガンなんだよ。井ノ原・・・・てめぇ。

 


「・・・・・・・さん。」

・・・・・・ん?

「・・・・・・もと・・さん?・・・・。」

・・・・・・・・ん?・・・・名前・・・呼んでる・・か?

「坂本さん?」

・・・・…・ん・・・呼んでる・・な・・。


俺は遠くから聞こえてきた自分を呼ぶ声に、ふと気付く。


「・・・・ん?」
「あ、坂本さん。・・良かった・・・起きた。」
「・・・へ?」
「・・目・・覚めました?」
「へっ?」

・・目、覚めた?って。・・・・あ、もしかして・・俺・・・・・・。

「・・ねぇ、・・・・。」
「・・はい?」
「・・・もしかして・・・俺・・・寝てた?」
「・・・・・はい。始まって・・・・すぐに・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「しかも・・あの・・・イビキ・・かいてました・・・・。」

・・・・うわ、サイアク。・・イビキって・・・・・・・・。

「ごめん。迷惑掛けちゃったよね?・・・ごめん。」
「・・いえ。・・疲れてるのかなって。分かってるし、忙しいのは。」
「・・・・・・ん、でも・・・ごめん。」
「いいですって、そんな謝らないで下さい。・・なんか・・・苦手そういうの。」

彼女は困ったような顔をして笑ってた。
ホントは井ノ原が来るはずだったのに、そこには俺が来ちゃって。つまんなかったろうに。
話することもねぇし、井ノ原みたいに舞台に詳しいってわけでもねぇし。無口になるはずだ。
それに加えてその俺が隣りでイビキかいて寝ちゃってたんだもんな。
やりきれねぇだろうな。

「あのさ?」
「はい?」
「お詫びといっちゃなんだけど、メシでも・・おごろうか?」
「えっ??」
「夕メシおごらせて。」
「・・・・・・・・・・・。」

彼女は黙って俺の顔を見てた。
もしや、これも、この気遣いも彼女には・・・迷惑だったか・・・?

「あの・・・。」
「ん?」
「それ、私の知ってるとこでもいいですか?」
「へ?」
「私の知ってる小さな赤提灯の屋台が駅前にあるんです。そこでも・・いいですか?」
「・・・・・・・・・・。」
「・・たぶん・・もうやってるはずだから。」

赤提灯の屋台・・・か。イマイチ彼女のイメージと似つかわしくないけど。
ま、知ってるとこだっていうし、迷惑かけたのは俺だしな。

「ダメ・・ですか?」
「・・・いや、いいよ。」
「ホントに?・・良かったぁ。」
「・・はは、・・つーか、どしたの?そんな急に喜んじゃってさ?」
「あ、ごめんなさい。・・・そこ美味しいんです。・・坂本さんにもぜひって思って。」
「・・・ふぅん。」

 


夕暮れを過ぎた駅前は、彼女と待ち合わせた時間とは少し雰囲気が違っていて
なんだかひっそりとしていた。

「あそこです。」

少し奥まったところに見える小さな屋台。”おでん”っていう赤提灯が下がってる。

「行こっか。」
「はい。」

俺たちは並んで赤提灯を目指した。

 

「こんばんは。」
「おぉ、嬢ちゃんいらっしゃい。」

笑顔で俺たちを迎えてくれたのは、60過ぎくらいの親父さんだった。

「こんばんは。」
「ん?おや?・・・・・・嬢ちゃんの・・コレかい?」

挨拶する俺に親父さんは親指を立てながら、悪戯っ子みたいな笑顔を向ける。

「い、いや・・・。」
「ちょっと!!!!!おじさんったら変なこと言わないでっっっ!!!!!」

・・・・・・・・・・・・。

否定しようとしかけた俺よりも少し早く、彼女が大声で親父さんの言葉を否定した。
そこまではっきりいう必要があるのかよ?ってくらいにな。

「そうなんかい?」
「そうよ。」
「兄ちゃん、ほんとかい?」
「まぁ・・・。」
「ほら、言ったでしょ?」
「そうかそうか・・・そりゃ残念だなぁ。」

ニコニコ笑いながら親父さんは酒のコップを俺たちの前へと置く。

「嬢ちゃんはいつもの・・・と。・・兄ちゃんも同じで・・いいかい?」
「あ、はい。」

そう言うと、親父さんはトクトクと冷酒を一升瓶から俺たちのコップへと注いでくれた。

「どうも。」
「いやいや。」

相変わらず親父さんはニコニコだ。
なんか和むなこの笑顔。癒される。・・・・・・・・井ノ原みてぇだな。

「おじさん、もう一杯。」

・・・・・へ?

ひとり、物思いにふけっていた俺の隣りで、彼女はすでに一杯目を空けたらしい。
そして、親父さんが注いでくれた二杯目の酒も・・・一気に空けた・・・・・。

「ちょ・・ちょっと・・平気なのか?」
「・・・・・平気ですぅ・・・・。」
「・・ちょ・・ちょっ・・・・。」

平気じゃねぇじゃん。フラフラしてんじゃん。

「おじさぁん、もう一杯!!」

・・・・はっっ?!

「ちょ・・・それは止めろって・・・具合悪くなるぞ?」
「平気平気ぃ~・・・。だってぇ、すごい気分いいもぉん・・・・。」

かなりろれつが回らなくなってきた様子の彼女だったが、親父さんが注いでくれた三杯目のコップまでも一気に飲み干した。
・・・・・おいおい。・・・つーか、井ノ原・・・俺、酒飲みだなんて・・・聞いてねぇぞ?

恥ずかしいことに、俺はひとりアタフタアタフタしてる。


「兄ちゃん、兄ちゃん。」
「・・え?」
「ほっとき。そのうちなぁ、勝手にひとりで寝ちゃうから。」
「・・・へ?」

そんな俺に向かって、親父さんは小さな声でこっそりと教えてくれた。
そして、相変わらずニコニコニコニコ。

・・・・はぁ。それなら・・・・いいんですけど・・・。


それからしばらくすると、俺の隣りからは親父さんが言ってたとおりに、「スースーッ」って
小さな寝息が聞こえてきた。
彼女の方を見てみれば、幸せそうな顔してスヤスヤ眠ってた。
今度は親父さんの方を見てみる。そうしたら、親父さんは「言ったとおりだろ?」ってな感じの顔して笑ってた。


「兄ちゃん、あんた嬢ちゃんの友達かい?」

親父さんがポツリと口を開いた。

「え?・・あ、いや。彼女の友達の友達です。」
「へぇ・・そうかい。」
「はい。」

親父さんはニコニコニコニコしている。

「どうしてですか?」
「いや。兄ちゃんなのかなぁって思ってな。」
「は?」
「嬢ちゃんの大好きな人。」
「は?!」

だ、大好きな人っ?!・・な、な訳ねぇだろ!・・・・何言ってんだ、このオッサン・・・。

「嬢ちゃんなぁ、大好きな人がいるんだって言ってたんだよ。」
「はぁ。」
「でもその人は、カッコよくて自分には手の届かない人なんだと。」
「はぁ・・・。」
「おまけに歌も上手くてダンスも上手くて、背も高い。とにかく凄い人だって。」
「へぇ・・・でもそれじゃ・・俺じゃないですよ。」
「どうしてだい?」
「俺は凄くないから。」
「・・・・・そうかい。」
「・・・はい。」

彼女の大好きな人か。何でも出来るスーパーマンみてぇな奴なんだな・・・・。

「でもな、兄ちゃん。」
「はい?」
「嬢ちゃんの話によればそいつは・・・嬢ちゃんの友達の友達らしいぞ?」
「は?」
「しかもな・・・・友達と同じ・・なんとかっていうグループのリーダーらしい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」


親父さんは変わらない癒される顔でニコニコニコニコ笑ってる。
彼女は俺の隣りでスヤスヤスヤスヤ寝息を立てている。

 


彼女が起きたら何を言おう。

やっぱり最初は・・・・「ありがとう。」って言うべきだろうな。

 

そして、次は・・・・・・・。

 

「今度は眠くならない舞台観に行こうか?」って・・・言ってみるとするか。

 

 


後から知ったことだけど、俺が話したこの話。すべては井ノ原の仕業だったんだと・・・・・・・・・

 

 


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坂本くんでした。

実はこのお話、坂本くんのお話の中では好きな方なんです。

初対面が苦手で人見知りの坂本くんじゃ彼女とは上手く話せないのは当たり前。

でも、よく喋る彼女だったはずなのに何故か無口で・・・

お喋りな子だっていきなり好きな人が現れて、しかもデートしなくちゃならない状況だったら大人しくもなりますよね~?

共通のお友達イノッチにはめられたふたりの出会いです^^

 

 

31~thirty one~

 

31~thirty one~

 

 

 

誕生日をふたりで一緒に過ごしたい大好きな人はいますか・・・?

 

 

時計の針はすでにPM10:00を回ってた。
今日は11月17日。
そう。あたしの誕生日。
なのに・・・・なのにあたしはこんな時間にたったひとりで電車に揺られてる。
周りには酒臭いオヤジがいてさ。
誕生日くらい残業ナシでゆっくりしたいじゃない。
素敵な彼氏とふたりで過ごしたいじゃない。
・・・って、そんなもんはいないんだけどさ・・・。
そこがまた虚しかったりするトコだわ。


はぁ。
ヘトヘト。
やっとこ玄関まで到着。
誕生日だからって新しいパンプス下ろしたら微妙に靴ずれだし。
ついてない。サイアクじゃない。

そんな半分鬱な気分でカギをどうにかこうにか開けて部屋へ入っていくと
おや・・・?
いい感じに電気がついてる。
ん・・・?!
あたしは鳥目だけど、だから電気つけっぱなしで出勤するけど
こんなに全部の部屋にはつけてきゃしないわよ?
玄関だけしかつけてかないわよ?
・・・・・・・何者?
バッグを胸に抱えこんで、そーっと部屋へと上がって行こうとした瞬間。
「あいたっっ!」
あたしは見事にコケタ。
あたしの足元。そう、コケの原因はといえば、どっからどう見たってあたしのじゃない
ゴツイ男物のブーツ。

ちょっと、何これ・・・・。

あたしんじゃないけど、微妙に見覚えはあったりして・・・・。

床にぶつけた膝をさすりさすり部屋の奥へと入っていけば、何やらテレビが大音量。
そんでもって「おかえり。」なんて笑顔で手を振る奴がひとり。
・・・・・・・・三宅健


「・・・・・・・・・・・・。」
「おかえり。何突っ立ってんの?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「座ったら?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「どしたの?」
「・・・・・っていうか、何でいんの?」
「うん?カギ開けて入ったからに決まってんじゃん。」
「・・・じゃなくて。何であたしの部屋にってことよ。」
「遊びに来たの。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ひとりじゃ淋しいかなぁって思って。ね?」
「・・・・・・・・別に淋しかないわよ・・・。」
「へぇ。」
「そんなことより、どうやって入ったわけ?」
「カギ開けて。」
「そのカギはどうしたのよ?」
「管理人さんに借りた。」
「は?ありえない。あの頑固ばあさんに限って。」
「だってさ、開けてくれたもん。弟で、仙台の田舎から久しぶりに出てきたって言ったら。」
「はい?!」
「すげぇよね。けっこう俺の芝居通用しちゃうんだね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

あのババァ、今度会ったら文句言ってやる。
いつもいつも嫌味ばっか言ってくるくせして、しっかり管理しやがれってんだ。
これがヤバイ兄ちゃんだったらどうしてくれんだって話よ。
三宅くんだったから良かったものの。
全く。
信じらんない。


「ねぇ。」
「は?」
「座ればいいのに。」
「え?」
「さっきから立ったまんま。」
「んあ?・・・あぁ・・・。」

気付けばそうじゃん。
自分ちに帰ってきてまで立ってることはないのよ。

はぁ。
床に腰を下ろし、テーブルに顔を伏せた。

「疲れてそうだね。」
「疲れてるわよ。」
「忙しいんだ?」
「わよ。そっちほどじゃないけど。・・・しかも、あたしばっか。」
「へぇ。」

「へぇ。」じゃないわよ。トリビアかってーのよ。
気持ちこもってないわよ。

「ねぇ。」
「あ?」
「つーかさ、腹へんない?」
「は?」
「俺腹へった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・ばかやろう。
あたしだってペコペコだっつーの。

「ねぇ。腹へった。」
「・・・・・・・。」
「腹へった。腹へった。」
「・・・・・・・・・・・・。」

・・・うるせぇ。

「ピザ食いたい。」
「は?!」
「ピザ食いたいな、俺。」
「・・・・・・・・・・・・。」

何スマイル振りまいてんのよ。
ピザなんてイヤよ。好きだけどイヤよ。
だってさ、ピザ食べるならお供にビールが欲しくなるじゃん。
んで、飲んだらアイスクリーム食べたくなるじゃん。
ってことはさ、必然的に太るじゃん。
こんな時間にムリ。
拒否。

「ねぇ、ピザ。」
「イヤよ。」
「何でだよ。自分だって好きじゃんピザ。」
「でもイヤ。」
「何だよそれ。」
「太るもん。」
「いいじゃん。平気だよ全然。」
「そっちはでしょ?あたしは平気じゃないのよ。危機なのよ。」
「いいじゃ~ん。」
「ダメ。」
「ピザ~。」
「ダメと言ったらダメ。」
「ピザピザピザピザピザ。」
「・・・・・・・・・・・・。」

・・・うるせぇ。

「・・・分かったわよ。」
「やったね。俺はねぇ、コレと・・・コレ。」

何、無邪気に喜んじゃってんのよ。
自分は痩せてるからいいけどさぁ。
”ピザピザピザピザ”言っちゃって、まるで子供。
・・・・・ニコニコすんなって、もう。
弱いなぁ、あたし。このスマイル。
なんかさ、『ま、いっか。』って思わせるパワーがあるんだよな・・・。

 

「ねぇ、これ美味いね。」
「ん?」
「このピザ美味い。」
「あー。ここねぇチェーン店じゃないからじゃない?」
「何それ。」
「個人店がさ、配達もしてんのよ。だからじゃないの?」
「へぇ。」

届いたピザをかじりながら、やっぱりニコニコしてる。
こんな喜ぶなら、ピザとってよかったかな。はは。
って、この”ニコニコ”はうつるのか・・・?あたしまでニコニコしてくるじゃん・・・。

あぁ、でもビールぅ・・・。飲みたくなってきた・・・。うぅ・・・・。

でも現実。悲しいかな、目の前にはお茶・・・・・。


ん?やけに視線感じるな。

「何?」
「ん?別に。」
「何か用?」
「うん?・・・ちょっと。」

そう言うと、三宅くんはおもむろに立ちあがり冷蔵庫へと直行した。
しかも、いきなり開けた。
げ。

「ちょっ・・・勝手に開けないでよ!」
「え~?」
「あたしんちなんだから、いじらないで!」
「もう開けちゃったし。」

ってサラリ。
そんでもって、ケラケラ笑いながら戻ってきた彼の手の中には何やら缶らしき物が二本。

「はい、どーぞ。」
「何?」
「おみやげ。」
「これ・・・ビール?」
「そ。地ビール。」
「何で、地ビールなんかあんの?」
「ん?仕事でねロケ行った時見付けた。」
「へぇ・・・。」
「美味いかはわかんないけどね。」
「ちょっと・・・大丈夫なわけ・・・?」
「はは。でも坂本くんと井ノ原くんは美味いって言ってたから平気じゃん?」
「ふぅん・・・。」

ま、いいや。
美味かろうがまずかろうが、ここにビールがあるのは確かだし。
わーい。

「いただきまぁす。」
「どーぞ。」
「・・・・・・・・・。」
「どう?」
「うん。おいし。」
「そ?良かった。」
「へへ。ありがとね、三宅くん。」
「・・・・・・・・・・・。」
「何?」
「ねぇ、あのさ。三宅くんってやめない?」
「何で?」
「堅苦しい。名前でいいよ。健で。」
「・・・・・・・・・。」
「呼び捨てしちゃっていいよ。」
「ムリ。」
「何で即答なんだよ!?」
「だってムリなんだもん。」
「何がだよ。」
「何もかもよ。」
「意味わかんねぇ。」

わかんなくないわよ。
ムリなのよ。
”健”なんてムリなのよ。
だって、火吹くわよ?顔から火が出るわよ?
恥ずかしすぎるのよ、名前なんて。
”三宅くん”でいっぱいいっぱいよ。

あたしは、妙に乾いてきた喉にビールを続けざまに流しこんだ。

 

あぁ、そういえば・・・アイス・・・。

ピザもビールも片付いてくると、やっぱりあたしの脳は”アイスクリーム”って指令を出した。
でもナイし。
我慢するっきゃない。
は。
でもな。
やっぱな。
・・・・・・・・食べたい。


ん?やけに視線感じるな。

「何?」
「ん?別に。」
「何か用?」
「うん?・・・・ちょっと。」

そう言うと、三宅くんは再び立ちあがり冷蔵庫へと直行した。
しかも、今度もやっぱり開けた。冷凍庫を。
うげ。

「ちょっ・・・・開けんなっていったでしょ!」
「いいじゃん。」
「よかないわよ!」
「だって、もう開けちゃったし。」

ってサラリ。
んでもって、やっぱりケラケラ笑いながら戻ってきた彼の手の中というか
腕の中には大きな箱が抱えられてた。

「はい、どーぞ。」
「ていうか、何コレ?」
「あけてみ。」
「ん・・・・・・・・?」

言われるまま開けたあたしの目の前には、色とりどりの”丸”がずらっと31コ。
そう、サーティワンアイスクリームのお持ち帰りアイスが31種類並んでた。
うそ?

「これ、アイス?!」
「そ。しかも31個全部違うよ。」
「うそぉ。ていうか、そんなあったっけ?」
「ないよ。」
「じゃ、何であんのよ?」
「作ってもらったの。」
「へ?」
「特注だよ。集めてきたんだよ。」
「・・・・・・・・。」

うそ。
すごい。
あたしがアイス好きなのは知ってると思ってたけど・・・まさかこんな。
初めて見たよ、こんなの。
すごいよ。

「誕生日だしね。」
「・・・覚えてたんだ?」
「当たり前じゃん。」
「・・・ありがと。」
「いえいえ。」
「・・・・ていうかさ、何で?」
「何が?」
「何でサーティワンのアイス31個?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「その調子じゃ忘れちゃったみたいだね。」
「何を?」
「夏にさ、自分で言ったんだよ?」
「あたしが?」
「そう。今年31歳になるから、それにちなんでサーティワンのアイス31個欲しいって。」
「あ。」

そういえば、そんなことを言ったような言わないような。
はははは・・・。
ていうか、覚えてたんだ。
それ、覚えててくれたんだ・・・・・?

「ねぇ。」
「ん?」
「ありがとね。」
「いいよ。」
「あたしも三宅くんの誕生日にはすごいお返ししなくちゃだな。」
「いいって。誕生日なんてとっくに過ぎてるし。」
「じゃ、クリスマスは?」
「いいよ。待てないし。」
「って、来月でしょ?」
「う~ん・・・ていうかさ・・・。」
「何?」
「今がいいんだけど。」
「は?」
「今欲しい。」
「え?そんなのムリよ。何もないもん。」
「別にものじゃないし。」
「じゃ、何よ?」
「ん?名前で呼んでよ。」
「へっ?!」
「健て呼んでくれたらお礼いらない。」
「・・・は?」
「簡単じゃん。オマケにタダだし。」
「ムリ。」
「また即答かよ。」
「そうよ。」
「何でだよ。」
「さっきも言ったでしょ?ムリなもんはムリ。」
「何だよそれ。訳わかんねぇよ。」
「何でもいいのよ!」
「よくねぇよ。・・じゃ、俺コレもらう。」

って三宅くんはあたしの目の前にあった『キャラメルリボン』に手を伸ばした。

「あーーーーっ!!ダメッッッ!!!」
「ダメじゃねーよ!」
「ダメよっ!あたし好きなんだもん!」
「俺も好きなんだよ!」
「あたしのでしょ?!プレゼントなんでしょ?!」
「俺が買ったんだよ!」
「あたしがもらったんだもん!」
「うるせーな!ケチ!」
「何よ。そっちこそ!」
「そっちだろ。」
「あたしが食べるのよ!」
「他の食えよ。」
「自分こそ。」

キャラメルリボン』はあたし達の間を行ったり来たり。
キャラメルリボン』にしてみたらいい迷惑だろう。
なんてことよりも、25歳と31歳のケンカとは到底思えん。


「じゃさ、俺そっち諦めるから、こっちちょうだい。」

ひとしきり”子供のケンカ”をし尽くしかけたころ、三宅くんは何やらテーブルの上にあった
小さな物体を手にとって、ブラブラと揺らしながらあたしの顔の前に突き出した。

「そ、それ!ちょっ・・・それはっ・・」
「いいじゃん。物々交換。」
「だ、ダメよっ・・カギでしょ、それ。」
「いいじゃん。別に。」
「良くないわよ。ていうか、あげる理由なんてないもん。」
「あるよ。」
「何よ?」
「だって来るたびに弟のフリして管理人さんに挨拶するのめんどくせぇもん。」
「・・・・って、また来る気?!」
「来るよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「だから、ちょうだい。」
「何でよ。イヤよ。」
「何でってさ、さっき言ったじゃん。」
「そんなん理由になってないもん。」
「やだから。」
「何がよ。」
「ん~?」
「挨拶すんのが?」
「ちげぇよ。」
「じゃ、何よ。」
「・・・・・他の人がもらうの。」
「は?」
「だから、他の人がこのカギもらってこの部屋入んのイヤなんだよ。」
「・・・・・・・・・。」
「そう言う訳だから、俺が先にもらう。」

と言いながら三宅くんはあたしの部屋のカギをポケットへとしまい込んだ。
げ。

「・・・ちょ、どう言うわけよ?勝手に決めないでよ!」
「勝手じゃないじゃん。話し合ったじゃん。」
「ないわよ。返してよ!」
「んじゃ、俺キャラメルリボンもらう。」
「・・・って、それはダメよ!」
「んじゃ、ポケットの中身はもらうよ?」
「それもダメ!」
「じゃ、名前で呼んでもらう。」
「・・・ぅっ・・・・。」
「どうすんの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

うぐぐ。
三者択一。三択・・・。
それも、まさに究極の。
どれもイヤよ。『キャラメルリボン』欲しいもん。カギあげたくないもん。
・・・でも名前じゃ、健なんて呼べん・・・。

「・・・・分かったわよ。」
「どれにすんの?」
「・・・ポケットの中身。」
「もらっちゃっていいんだ?」
「いいわよ。そのかわり無くさないでよ?」
「わかってるって。やり~♪」

あらら。
満面の笑みなんて浮かべて喜んじゃってるわよ。
ていうかさ、どういうことよ?
さっきのセリフ。
「他の人がこのカギもらってこの部屋入んのイヤなんだよ。」
ってどう言う意味???
もしや芝居?!・・・・・・わかんない。
悩ませないでよ。考えさせないでよ。
これ以上頭使わせないでよ。もう。


「あ、あのさ。」
「何?」
「カギあげたんだしさ。」
「・・・・だし?」
キャラメルリボン物々交換してよ。」
「ん?あーどうぞ。ご自由に。」
「やった。」

あーおいし。
幸せ。
太るなんて今日は忘れよう。
なんてったって誕生日だし。久々の『キャラメルリボン』だし。
ふふふ。

「すっげぇ笑顔。」
「は?!」
「ニコニコしてんの。」
「う、うるさいわねっ!」
「ガキみてぇ。」
「な・・・あ、あんたに言われたくないわよっ!!」

全く口の減らない奴。
黙ってればカワイイのにさ。
口開けばムカツクことばっか言うんだもん。意味わかんないし。
・・・・・そう。意味わかんない。


「ねぇ。」
「あん?」
「あたしんちのカギなんてもらってどうすんの?」
「え?・・・あぁ、売る。」
「はっ?!」
「冗談。」
「・・・・・・・・・。」

・・・ばかやろう。

一瞬でも”あたしのこと好きなのか?”って思ったあたしがバカじゃんか。
ま、いいや。
その真相はいつか聞き出してやる。


「あのさぁ。」
「何?」
「もう一個。」
「何?アイス?」
「違うわよ!!」
「じゃ何?」
「名前のことよ。」
「名前?」
「そう。」
「名前が何?早く言ってよ。言いたいことは。」
「・・・・・・・・・・・。」
「何?」
「名前で呼ばなくてもいい?」
「は?」
「今のまんまでいい?ってことよ。」
「意味わかんね。」
「もう。三宅くんって呼んでるままでいいかってこと!」
「・・・・・・・・・・・・。」
「三宅くん?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・ダメ?」
「仕方ねぇな。了解。」

あぁ。ホッとした。
さすがに”健”はムリ。
あぁ良かった。これで救われたわ。
ほ。

 

でも、救われちゃいなかった。
気付けば奴はあたしのアイスを3個も食べていた。

「ちょっっ・・・・!イヤーーーーーーー!!!」
「何だよ?!」
「アイスぅぅぅぅぅ!!!!」
「何だってんだよ?!」
「食べすぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「いいだろ!たくさんあんだから。」
「イヤよ!」
「食いてぇんだよ!」
「ていうか、あたしんでしょ?!」
「つーか、俺が買ってきたんだよ!」
「あたしがもらったんだってば!誕生日なんだってば!!」
「うるせーな。心が狭いんだよ!」
「どっちがよ!」
「そういうこと言ってっと、こっちも食うぞ!」

そう言うやいなや、彼は”あたしの”アイスを連続5個も上の部分だけすくって食べた。

「きゃーーーーー!!!バカァァァァァァァァ!!!!」
「うるせー!」
「カギ返せーーー!!」
「話すりかえんなよ!」
「返せーーー!」
「返さねーよ!」
「アイス返せーーー!!」
「もう食ったからねーよ!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!食べたかったのにぃぃ!!」
「何べそかいてんだよ!?」
「食べたかったぁぁぁぁぁ!!!」
「うるせぇな、今度買ってくるよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・。」


相変わらずあたし達の関係っていうか、三宅くんの気持ちは読めないけど
こんな風にしてるのはイヤじゃないし。

子供みたいなケンカしたり、一緒に騒いだり、笑ったり・・・・
そんな風にしてくうちに、こんなあたし達でも少しは変わっていけるのかな。
あたしも、まだ”三宅くん”ってしか呼べないけど
そのうち”健”って呼べるようになったりするのかな。


恋って不思議だよね。ルールなんてないんだから。
「好きです。」とか「付き合ってください。」とか言わなくちゃ始まっちゃいけない訳じゃないし。
「ずっと一緒にいようね。」って言わなくちゃ来年も、その先も
一緒にいられないわけじゃない。

あたしはね、そんな決まりきった言葉達の代わりにこう言うことにするよ。

「来年の誕生日はハーゲンダッツのアイス32個ちょうだいね。」


だからさ、来年もふたりで一緒にアイス食べようね。

 

 

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健くんのお話でした。

当時私の中のイメージの健くんはこんな感じでした・・

お互い好きなんだけど素直になれないからギャグみたいな展開になって行ってしまうというね。

自分が年上で、健くんみたいな子が傍に居たらこんな風になってしまうんじゃないだろかっていう想像だったりします。