UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

Worst friend

 

Worst friend

 

 

 

 

全く、何で俺はこんなところにおるんや。
軽く傷心旅行でも行こうと思ったけど、行き先なんて見つからんし。
んでもって、乗りこんだ電車がこれやったらさ。
もう、未練タラタラやん・・・・・。


”水戸行きの電車”
俺はその中でひとり座っていた。
車内はガラガラ。誰かにばれることもなく、好きな本だっていくらでも読める。
でも、その行き先が問題で。
”水戸”ってトコが問題でさ。


3日前。
俺はふられた。
しかもこっぴどく。
ていうか、でも、ふられたんかどうかも実のトコはわからん。
あれって告白だったのかさえ、俺にはわからんし。
あえて思い出したくない事実。
はっきり言って悪夢や。


「気持ちは嬉しいけど、あたしダメ。」
「どうして?」
「ん?だって岡田くんてあたしのワースト3にぴったりなタイプなんだもん。」
「は?」
「はっきり言っちゃえば、受けつけないって感じ?」
「・・・・・・・。」
「あたしね、岡田くんみたいに整った顔の人嫌いなの。」
「・・・・・・・・・。」

は?
それってなんやねん。
”整った顔”って誉めておきながら”嫌い”って落とすんか??!

「それにね、あたし痩せてる人も苦手なのよね。」
「・・・・・・・・・・。」
「ね?それって岡田くんに当てはまってるでしょ?2個もビンゴでしょ?」
「・・・・・・・・・。」

それって。
それってはっきり言って偏見だろ。
過去に何があったんだかしらないけどさ。偏見や。
かなりの差別。

「あ、もしかして今差別とかって思ったよね?」
「へっ・・?・・あ、い、いや・・・。」

するどい。

「まぁいいけど。でもね、差別って訳じゃないの。」

じゃ、どう言うわけだよ。

「なんて言うのかな、生理的に受けつけないって感じだから。」
「でもさ、ずっと友達みたくしてたやろ?」
「うん。友達よ。今でもね、もちろん。だけどさ、付き合うのはダメなのよ。」
「・・・・・・・・・・・。」

何だよ、それ。訳わからん。

「だってさ、カッコイイ人って絶対自分に自信あるでしょ?」
「そんなん、ないよ。」
「ううん、ある。それにさ、だから浮気とかもするし。」
「しないよ。」
「するわよ。ナルシストだったりもするし。」
「しないよ。」
「するわよ。」
「しないって。」
「する。岡田くんだって自分で気付いてないだけよ。」
「そんなん、勝手に決めんなよ。」
「だって、そうなんだもん。」
「違うよ。」
「そうよ。」
「・・・・・・・・。」
「でしょ?」
「・・・・・・・・・。」
「納得?」
「・・・・・・・・・・。」
「だからね、ごめんなさい。」

一方的だ。
まるで俺の意見なんて聞く耳もっとらんし。
反論だって出来やしないやん。

「・・・じゃさ、ひとつ聞いてもいい?」
「何?どうぞ?」
「どんな人やったらいいってわけ?」
「う~ん。反対の人かな。岡田くんみたいなタイプの人のね。」
「例えば?」
水戸泉。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

絶句。
予想もしとらん名前出してきた。
水戸泉
それって力士やろ?お相撲さんやろ?
俺にどうしろって言うねん・・・・。


そんなことがあった3日前。

だからなんかな?だから俺”水戸行き”なんか乗ってんのか?
水戸泉』の印象に負けたんか?


気持ちの上では納得なんてしてへんし。
俺の中身より外見で拒否されたんだし。とはいえ、『水戸泉』みたくはなれんし。
全部吹っ切りたいのに”水戸行き”だし・・・・・。
やっぱり未練タラタラやん。

だけど、窓の外はのどかな景色が広がってて、なんだか凄く癒されたりする。
普段の俺の生活からじゃ到底見つけらんない時間。
”傷心旅行”改め”未練旅行”もなかなかええもんかも。

そんなバカみたいなことを考えながら、俺は静かな眠りへと落ちて行った。


数時間後。
「お客さん。」って俺を呼ぶ声と、ポンポンって軽く肩を叩く手に起こされてみると
そこはすでに目的地だった。
水戸泉』の出身地・・・。

なんか微妙な気分やな。

電車を降りながら微かに苦笑い。
と、同時に俺のデコにはでかい荷物らしきもんが「ゴツンッ。」
うげ。
目から火花が飛び散った。
頭割れるやん。バカになるやん。

「あっ、すいません!大丈夫ですか?」
「・・・・・・・・・・・・。」

いてて。
なんとなくだけどタンコブできてるような気がするんやけど。
これ以上デコが出たら他のメンバーに何言われるか・・・。

てなことを考えながら顔を上げたら
うげ。
驚くべき顔がひとつ。
3日前の悪夢が蘇る・・・・。

「何で?!」

それはこっちのセリフやん。そっちこそ何でおるんや?!

「・・・・そっちこそ。」
「え、だってここはあたしの地元だもん。」
「へ?」
「あたし水戸出身。実家帰ってきたのよ今日。」
「へっ?」

そんなん初耳。

「ていうか、岡田くんこそ何で?」
「お、俺?!・・・・は・・・あ、旅行。」
「旅行?」
「そ、そう。」
「ふぅん。」
「何か文句あんの?」
「別に。ただね、芸能人て海外とか行くって思ってたから意外だって思っただけ。」
「だって1日だし。」
「あ、そうか。それじゃムリだね。」


俺達は並んで駅の外へと出た。
彼女は左方向へ行くみたいだけど・・・俺は・・・。
困った。
どうすりゃいい?

「ねぇ、何処行くの?」
「へ?!」
「行き先よ。旅行の。」
「・・・う・・・んと、か、偕楽園・・?」
偕楽園?」
「そう。」
「へぇ。」
「名所・・やろ?」
「まぁね。・・・でも梅のね。今は時期じゃないけど?」
「べ、別にいいだろ。好き好きやろ?」
「そうね。」
「やろ?」

別に行きたかったわけじゃないけど、知ってるとこが他になかっただけで。
ついな。
口からでまかせ言ってみた。

「ねぇ。」
「ん?」
「ご飯食べた?」
「あ?」
「お腹すいてない?」
「あ。」

そういや、東京出てからなんも食ってへん。
今気付いた。
気付いたら、なんだか妙に腹減ってきたりなんかして。

「うち来る?」
「は?!」
「30分くらい歩くけどさ。」
「は・・・ぁ?」
「よかったらだけどね。」
「はぁ。」
「ご飯くらい出すわよ?」
「う・・ん・・でもさ・・・。」
「何?」
「俺さ、これから・・偕楽園?・・・行くし・・・・・。」
「ふぅん。」
「だからさ。」
「そう。でも言っとくけど偕楽園ってこの駅じゃないわよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・バレてる。


結局俺は彼女の家へ行くこととなった。

細く伸びる道の両側には畑がずっと広がっていて、東京とは全然違う。
すげぇ、田舎。

「田舎でしょ?」
「へっっ?!」
「なんて声出してんのよ?」
「え?あ、いや・・。」
「図星?」

彼女は意地悪そうな顔でニッと笑った。
俺は痛いトコを突かれて、ただ苦笑いするしかない状況。

「あ、・・・・・それ程でも・・・ないと・・・。」
「別にいいわよ。気なんか使わなくたって。分かってるし。」
「ほんとに。それ程じゃないよ。」
「はは。ありがと。でもこんな田舎だけどあたしは大好きだからさ。」
「・・・・・・・・・・。」

彼女の顔は何処か誇らしげだった。
良く分からんけど、いいなって思った。

3歩くらい先を歩く彼女は、俺より全然大きな重そうな荷物を持ってたけど
でも足取りは軽くて、俺なんかよりずっと元気だったし。
すごいよ。

「なぁ。」
「ん?」
「荷物。」
「何?」
「重くない?」
「あぁ。ちょっとね。でも平気よ全然。」
「持とうか?俺。」
「・・・・・・・・。」
「良かったら持つけど?」
「・・・・・・・・・・・・・。」

急に無言。
何や?訳わからん。返事くらいしろや。

「岡田くん3つ目ビンゴ。」
「は??」
「あたしのワースト3の最後の1個ビンゴしたわよ、今。」
「へ??」
「カッコイイ人。痩せてる人。で2個。」
「・・・・・・・・・・・。」
「で3個目は”女の荷物持ってあげちゃう弱い奴。”。今見事にビンゴした。」
「は?何やそれ。」
「とにかく、あたしは男の人に荷物持ってもらうほど偉くもないし、弱くもないから。」

そう言ったかと思ったら、彼女はどんどん先へと歩いて行った。
俺のことなんか見向きもしないで。

え?え?!え???
そんなん急に言われたってどうしていいかわからへんやん。
それに俺別に弱い奴ってわけじゃないし。言いなりになってるわけじゃないし。
何やそれ。
急に怒って、いきなり「ワースト3にビンゴ」したとか言われたってわからんわ。
つーか、ムカついてきた。
なんかムカツク。
ムカツクわ。
言われっぱなしで。しかも3日も前からずっとやし。
さすがの俺やって腹立つやん。

「なぁ。」
「・・・・・・・・・・。」
「ちょっと待ってよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「話くらい聞いてよ。」
「・・・・・・・・・・・・。」

つーか、そっちがその気ならこっちだって考えがあるし。
堪忍袋の尾が切れるって。

「勝手に決めんな!」

ビクッとして彼女は止まった。
その背中に向かって、俺は思ってたことを全部ぶちまけた。
ま、背中ってトコは微妙やけど・・・・。

「俺は弱い奴やない。」
「・・・・・・・・・・・。」
「それにナルシストでも自信家でもない。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「浮気だってしたことないし、するつもりだってない。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「何で女の子の荷物持つ奴が弱い奴?ただ重そうだから手伝うだけやろ?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「男の方が力あるし、助けてやりたいって思うのは普通のことやろ?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「それのどこが弱いんだよ。」

彼女はピクリともしないで只突っ立ってた。
俺の言ったことが心に染みたのか、それとも怒ってるんかわかんないけど。
でも俺はこれでいいって思ってる。
だって言わなきゃいけないときは言わないとやろ。男なら尚更。

「・・・・・・・・ん・・。」
「え?」
「・・・・めん・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・ごめ・・ん。」

消え入りそうな声が聞こえてきた。
それは確かに「ごめん。」って言ってて、こんなときに不謹慎だけど
俺は思わず彼女を後ろから抱きしめたい衝動に駆られた。
情けない・・・。

「もういいよ。俺も言い過ぎたから。」
「・・・ん。」

やっぱ女の子。
いくら気が強いっていったって、こんな風にホントはもろいんやな。
俺が守ってやらなくちゃ、やっぱダメかもな。

なんて思いながら近づいて行った俺へと、彼女は開口一番。

「でもさ、自分の荷物は自分で持つし。」

あ、そうですか・・・。
やっぱ気のせいみたいです。もろいなんて考え違いみたいでした。

弱いな俺。
違う意味でだけど弱い。
俺、彼女に弱い・・・。はぁ。

 

彼女の家は畑のすぐ隣りにあった。
昔ながらの農家って感じで、庭も広くて大きな家だった。

「ただいま。」
「こんにちは。」
「あらぁ。こんな素敵な子連れてくるんだったら、もっと早く言ってくれればぁ。」

で、彼女のお母さんはやっぱり典型的な農家のお嫁さんって感じで。
明るくて、”かかぁ殿下”って言葉がぴったり。

「いいのよ、母さん。そんなんじゃないし。偶然会ったのよ駅で。」
「あら、そうなの?」
「あ、はい・・・。」

つれない紹介。
ま、仕方ないか。”ワースト3ビンゴ男”やしな。

「あ、それと彼ね、手伝ってくれるらしいから。だから代わりにご飯出してくれる?」
「あらあら。そうなの?悪いわねぇ。ご飯くらいお安いご用よ。」
「すいません。」

いいな。なんか温かいおかんで。
ていうか、手伝うって何や?何を手伝うって・・・・・?
聞いとらん。

 

お昼ご飯はお結びとたくあんだった。
でも、そんな素朴な食事でさえも、こんなにのどかな景色の中だと不思議と
メチャメチャ美味くて。
いつもはたいして食わない俺なのに、今日は3つも食ってしまった。

「ごちそうさまでした。」
「おそまつさまです。」

彼女のおかんはやさしい笑顔だ。
そういえば、おかん元気かな。この頃帰ってへんな・・・・・・・・。

「ごちそうさま。」

彼女はそう言うなり立ちあがり、そそくさと何やら準備にとりかかってる。

「何してるん?」
「ん?支度。」
「何の?」
「芋掘り。」
「芋掘り?」
「そ。さつまいも。」

あ、そういや何か言ってたな。
「手伝う」とかなんとか、かんとか・・・・・。

「掘りに行くん?」
「そうよ。なんなら一緒に行く?」
「へ?」
「冗談よ。芋掘りするアイドルなんかいるはずないもんね。」
「・・・・・・・・・・。」
「あたし行くからさ、ゆっくりしてって。」
「・・・・・・・・・。」


彼女は整った道具一式をトラックの荷台へと積んで準備を続けていた。

俺何しに来たんやろ?
ふられた彼女の実家にまで来て、昼飯食って、くつろいで。
これじゃ、ただのアホやん。

「なぁ!」

彼女は俺の呼ぶ声に振りかえる。

「何?」
「俺も連れてってくれへん?」
「・・・・は?」
「邪魔せぇへんから連れてってよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「一応さ、男だし力になれるよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「あ、芋持つんやなくって、掘る方のね。」
「・・・・・・・・・・・。」

無言。
返事すらしないで彼女は運転席に乗りこんでエンジンをかけた。
どうやらシカトされたらしい。
結局のところいつまでも、何を言っても俺は”ワースト3ビンゴ男”のままらしい。
はぁ。
でもさ、シカトすることないやろ。

「乗って。」

突然窓が開いて彼女の声が響く。

「早く乗って。行くんでしょ?」
「あ、あぁ。」
「でもさ、言っとくけどメチャメチャこき使うわよ。男なんだもんね?」
「・・・・・・・・・・はは。」

相変わらずに相変わらずな口調。
だけど少しは受け入れてくれてんのかな?
別に今すぐ認めてもらおうとは思ってへんけど、ワースト3が2とか1に減ったら・・・
とか微かな期待はしてたりして。
それも・・…・ムリか?
ま、とりあえず頑張りますか。

 

でもそれは俺の想像してた芋掘りなんてもんとは雲泥の差だった。

俺は3時間半も中腰のまま掘りつづけ、途中足はつるし・・・。
最終的に俺らが掘った芋達は軽トラックの荷台にいっぱいになって
積みきれなくなるんじゃないかってくらいだった。

明日の朝の俺は、かなりの地獄だろう。
体中がギシギシいっとるやろな。
”男”なんて意気込んだ俺がやばかった。大間違いだった。
いててて。
ダサい。

「大丈夫?」
「へ?あー全然余裕。」
「ほんとに?」
「当たり前やん。いつも踊ってるし俺。」
「そっか。そうだね。」
「ん、はははは・・・。」

はぁ。
踊ってるとは言え、使ってる筋肉は別もん。きっと。
いや、確実に。

「あたしさ、初めて見た。」
「何が?」
「長靴。」
「は?」
「岡田くんの長靴姿。履かないかと思ってたから。」
「あ?履くやろ芋掘るなら普通。」
「そうだね。それにさ、そんな頭も。」
「あ?どんな?」
「ボサボサ。」
「ん~?いつもだけど?」
「うそ。」
「いつもだよ。裏では・・ていうかテレビ出てないときは。汚い。」
「ふぅん・・。」
「何?」
「ん?ちょっとね、見なおした。」
「え?」
「ん。こんな頑張るって思ってなかったから。」
「・・・・・・・・・。」

神様はご褒美をくれた。
着てるもんも顔も真っ黒にして頑張った俺に。
誉められた。
たぶん初めて。出会ってから1年以上経つけど、たぶん初めてだ。
妙に弾んでるわ、俺。
この体力とは裏腹にな・・・・・。

 

夕暮れ時の彼女の家の庭で、お母さんは焼き芋をつくってくれた。
アツアツホクホクの美味い芋を、景色のせいなのか空気のせいなのか
またしても2本も食ってしまった。
そんな俺を彼女は横目で「大丈夫?!」てな顔してみとったけど。
気にしない。気にしない。

そんで、2本も食った俺に、お母さんは袋いっぱいにおみやげの芋まで持たせてくれた。
もちろん彼女も。

帰りは大きな袋いっぱいの芋と一緒に電車に揺られることになったんだ。


「今日は何から何までありがとな。」

窓から差し込む夕日が眩しい電車の中で、俺は隣りの彼女に声をかける。

「うん?別に。こっちもこき使ったし。」
「芋掘り楽しかったよ。」
「うそ~?!」
「何やそれ、信じてよ。」
「ま、程ほどにね。」
「・・・・・・・・。」
「岡田くん?」
「・・・・・・・・・。」
「感謝してるよ?少しは信じてるよ?」
「・・・・・・・・・・。」
「怒った?」
「・・・・・・へこんだ。」
「ははははは。」
「何笑ってんだよ。」
「だって。」
「笑うなよ。」
「だってさ、今すんごい変な顔してたんだもん。」
「は?!」
「初めて見た。あんな顔。」
「・・・・・・・・・・。」
「あ、また。」
「・・・・・・・・・・・。」
「かっこわる。」
「・・・・・・・・・・。」
「あははははは。」

そんな顔して笑うなって。
なんか思い出すんだよ、胸の痛みをさ。
俺、笑ってる顔が一番好きだったんだからさ。・・つーか今も好きだけど・・・。
「かっこわる。」って爆笑すんなよ。
ある意味失礼だ。

って「かっこわる。」・・・?
「かっこわる。」って言った???
「かっこわる。」って格好悪いってことやんな?
つまりはカッコイイってことの反対やんな?

「なぁ。」
「ん?」
「ワースト3のうち1個減ったな?」
「え?」
「かっこわる。って笑ってた。」
「あ。」
「てことは、俺は”カッコイイ人”ってことには当てはまんないよね?」
「・・・・・・・・・。」
「そうだよね?」
「・・・さぁ、知らない。」

とぼけるように返事して、彼女は窓の外を眺めてる。
ま、いいや。
とりあえず、どうにかこうにか1個は減ったみたいだし。
3個減るのはムリかもだけど、気長に構えてみるか。いつかは無くなるさって。
って俺、傷心旅行に出たんやった。途中で未練旅行になったけど。
何張り切ってるんだ??
この先も行くぞ!!みたいな気合をいれてたような気がする・・・今さっき。
う・・・相変わらず未練タラタラ。


ん?!

いきなり右肩が重くなった。

わ。

彼女がもたれて寝てた。

うーん、複雑。
嬉しいような虚しいような。でもなんか嬉しいような。
悪い気はしないのは確か。

つーかさ、あんな強気なくせして寝顔はかわいい。
疲れたんやろな。
重いけど、俺もつかれてるけど、でもこんなことは2度と無いかもしれないから
寝かせてあげよう。
肩貸してあげよう。


俺達の足元には大きな袋が2つならんでる。
そんで、俺の肩には彼女がもたれて寝息を立ててる。


なぁ。
やっぱ俺、未練タラタラだわ。
しかも今日もっと好きんなったし。
だからさ。
俺もう1回ぶつかるわ。
東京帰ったら、もう1回告白することにするわ。

覚悟しといてな。

今度は頼むからフラんといてな。

 

俺も静かに目を閉じた。

 


 

 

------------------------------------------------------------

岡田くんでした。

このお話、当時のあとがきを見れば岡田くんの24歳のお誕生日記念で書いたようですね~。2004年。約10年前か~。

まだこの頃は関西弁交じりの話し方をしてたのでこんな口調です。今はほとんど出て来ないですもんね、関西弁。時々単語のアクセントの位置が標準語と違うくらいで。私、岡田くんの関西弁好きだったので残念なんですよね。

当時は既に寡黙でカッコイイ岡田くんだったんですが、あえてブサイクにしてしまったのには理由があって、デビューから数年の可愛らしくて素朴で、元気いっぱいだった岡田くんが恋しくなったからなんですよね。そして、モテモテで振られることなんてないであろう岡田くんが、泥臭く好きな子を追いかける姿を書きたかったのですよ。すんません^^;

ちなみに、「水戸泉」さんは実際の人気力士さんでした。お塩いっぱいまく大きくて太めのね^^