UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

初雪

 

初雪

 

 

 


空には眩しい星。
いつしかその星たちは、真っ白な雪へと姿を変え、
そして愛を叶えるために、地上に住む3人の青年の元へと舞い降りてきたのです。

 

 

 


「~~♪~~♪♪~~・・・・。」

 

思わず鼻歌歌ってた。”ハッピーバースディ”。
今日は君の誕生日。
『仕事終わったらすぐに俺んち来いな。』って朝からメール入れといた。
俺はと言えば、朝から密かに君のために下準備。
ケーキを買って、部屋をキャンドルで飾り付けて、君の大好きなシチューをこしらえて。
時折、うっすらと口元に笑みを浮かべながら、ここへ君が来た時の
驚いた表情を想像したりしてる。


-------ブルブルブルルッ--------


テーブルの隅っこで携帯が震えてる。
手にとってみれば、君からのメッセージが一件届けられてた。

 

『もうすぐ着きます。』

 

自然とほころぶ口元を隠すように、そっと握り締めた携帯にキスをした。

早く。早く。
準備はもう万端だよ。
君の大好きな真っ赤なイチゴが乗っかったケーキも、優しく灯るキャンドルたちも、熱々のシチューも
・・・そして。

大切な君のためにと選んだプレゼントも。
これからもずっと俺の隣りにいて欲しいって気持ちと共に、君へと贈るから、
どうか、何も言わずに受け取って欲しいんだ。

 

きっと、君はもうすぐ着くはず。
カーテンを少しだけ開けて、窓の外を眺めてみると、空からはフワリフワリと小さな綿帽子。
いくつもいくつも静かに地上へと舞い降りる。


早く。早く。
もう待ちきれないよ。
忙しい合間のほんの僅かな時間。早く逢いたいよ。


窓の外には、数え切れないほどのフワフワ小さな綿帽子。

 

 

 


「あ・・・雪だ・・・・・。」

 

 

 


空から静かに舞い落ちる、雪のかけらに向かって思わず手を伸ばした。
今日は彼女の誕生日。
忙しくていつも寂しい思いばかりさせてる彼女のためにと俺が考えたプレゼント。
『思い出の場所での待ち合わせ。』
彼女と俺が初めて出会った場所で、今度は偶然じゃないを出会いを演出したかったんだ。
だけど、彼女はきっと怒るって分かってたから、メールだけ勝手に入れといた。
しかも、返事は一切無視してさ。


・・・早く来てよ。


はやる気持ちが押さえきれない。
早く逢いたいよ。もう待ちきれないよ。


・・・逢いたいよ。

 

「・・・・・・・。」

「どうしてメール無視したの?」

「・・・・・・・。」

「しかも、こんなに人が多い場所で待ち合わせなんて何考えてんのよ?」

「・・・・・・・・。」


案の定彼女は怒ってた。
だけど、理由は明快で。怒る理由は俺のため。俺がバレちゃって騒ぎになったらって心配してるから。
こうやっていつも気にして、っていうか気を使ってる。
そういう思いをさせちゃってる自分がなんだかちょっぴり後ろめたい。
・・・だから、だから今日だけはさ。


「今日はさ、特別なんだ。」

「特別?」

「そ。今まで外で待ち合わせって無かったでしょ?だからね、今日だけはって。」

「何で今日なのよ?別に逢うなら外じゃなくたって・・・。」

「だってさ、今日誕生日じゃん。」

「え・・?」

「それにさ、ここって俺達が初めて逢った所でしょ?」

「・・・・あ・・・。」

「思い出した?」


彼女は少しだけ潤ませた目をして、恥ずかしそうにうつむいた。
そして、俺の顔へとそっと人差し指を伸ばして、その鼻の頭を軽く押しながら小さく微笑む。


「・・・・・バカ。」

「なんだよ?バカって言うなよなぁ。」

「だってバカなんだもん・・。」


潤んだ目からは、涙が一雫、静かに頬へと零れ落ちた。


俺の大切なヒト。
これからもどうか、ずっと俺の隣りにいてください。

 

 

 


「・・・・誕生日おめでとう。」

 

 

 


普段はあんまりしないメールを送った。今日は特別だ。
今日はあいつの誕生日。
別に付き合ってるわけじゃない。いわゆる、友達以上恋人未満って関係だ。
あいつの恋愛相談の聞き役は、いつもこの俺だった。
それでもいいって思ってた。
あいつが俺の隣りで笑ってくれるんなら。”恋人”って括りに縛られることはないって思ってた。
だけど、それとは裏腹な想いが溢れてきては俺を困らせるんだ。
『あいつは友達なんかじゃない。』
その思いはいつも、俺の胸を思い切り掴んで捻り潰したような強い痛みを植え付けていく。

 

~~♪♪~~・・♪~♪・・~~

 

着信メロディと共に届けられたのはあいつからのメール。


『ありがとう。嬉しいです。』


強い痛みが俺の胸を掴んで捻り潰していった。


いつまで俺達はこのままなんだろう。
俺は一体いつまでこんな思いを抱えて行くんだろう。
いっそ全て捨ててしまえたら・・・。

 

「・・・・・・っ・・。」


唇を強く噛み締めて、うつむいた俺の頬に何かが冷たく触れた。


「・・・・・雪だ・・。」


空からは無数の雪の花びらが、俺の元へと舞い落ちる。
吸いこまれそうな、その花びらの中で俺は静かに目を閉じあいつを想った。


・・・・・そして、”覚悟”を決めた。

 


雪は相変わらず降り続く。
俺の足が向かった先は、あいつが住むアパート。
俺が決めた”覚悟”とは、この曖昧な関係からの決着だ。

アパートの前の道路から、あいつへと電話をかける。
数度繰り返した呼び出し音の後、電話の向こうからは愛しいあいつの声が響く。

 

「・・もしもし?」

「・・・・・・・。」

「もしもし?」

「・・・・・俺。」

「・・うん。」

「・・・・・・・。」

「どうしたの?」

「・・いや。・・・誕生日のお祝い言ってやろうと思ってな。」

「・・さっきメールくれたよ?」

「あぁ。でもな、直接な。」

「そうなんだ。・・・ありがとう。」

「あぁ。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「おまえさ。」

「え?」

「今部屋か?」

「・・・うん、そうだけど・・なんで?」

「カーテン開けてみろよ。」

「え?なんで?」

「・・雪降ってんだ。すげぇ綺麗だぜ。」

「・・・・え?・・・・・・」

「・・・・・・・・。」

「あ・・・ほんとだ。・・・すごい・・・。うわぁ・・・。」

「なぁ?」

「ん?」

「外出てみろよ。」

「外に?なんで?」

「いいから。出てみろって。」

「・・・うん・・・・・・・」

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・どうして・・・・。」

「だから言ったろ?誕生祝い直接言いに来たって。」

「・・・でも・・。」

「なぁ。」

「え?」

「・・雪降ってんな?」

「・・うん。」

「・・・綺麗だな。」

「・・・うん。」

 

俺は道路からあいつを見上げてた。
あいつはベランダから俺を見下ろしてた。
ふたりの間には、幾千もの真っ白な雪の花びらが、ひらひらと舞い降りている。

 

「・・なぁ。」

「・・・ん?」

「・・・俺さ。」

「うん。」

「・・・・・。」

「・・・・・何?」

「・・・あぁ。」

「・・・・・・・。」

「・・・おまえのこと好きだ。」

「・・・・・・・。」

「友達なんかじゃない。」

「・・・・・・・。」

 

耳元で電話を切る音が聞こえた。
ベランダのあいつは、その身を乗り出して俺に向かって叫んだんだ。

 

「あたしもだよ。」


「・・・・・・・。」


「あたしもずっと好きだったよ。」

 

 

俺の胸を掴んでは捻り潰して行った激しいあの痛みは
もう二度と俺を襲うことはないだろう。

 

 

 

 


空には眩しい星。
いつしかその星たちは、真っ白な雪へと姿を変え、
そして愛を叶えるために、地上に住む3人の青年の元へと舞い降りてきたのです。

 

 

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名前を出してないけどカミセン3人です。

太字になってるセリフ2か所で場面が変わります。

そのセリフは前の場面と次の場面両方でのメンバーのセリフだったりもします。

あえて書かないけどどれが誰か分かるだろうか(笑)

このお話は「恋のシグナル」のPVを見てあまりの可愛さに書きたくなってしまって衝動書きです^^;