UNLIMITED。

昔々に書きためたV6のオハナシ。妄想空想ゴト。

TWO HEARTS

 

TWO HEARTS

 

 

 

 

好きって言わない彼。
「一緒にいると落ち付く。」って言葉の中にときめきはあるの?
好きっていう気持ちは・・・・・ある・・・・の?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 


ある日の昼下がり。

>今から行く。

携帯に突然届いた剛からのメッセージ。
思いも寄らない出来事に、あたしの『ここ』は一気に鼓動が加速した。
だって、1ヶ月ぶりだったから。
剛に会うのは、前に会った日から数えて今日でちょうど1ヶ月。

嬉しい。嬉しい。嬉しい。

訳もなく部屋の中を行ったり来たりしてみた。
そして、いつものように冷蔵庫の中に剛の好きなコーラがあったかどうかもチェックした。
ポテトチップスもね。

なんだか落ち付かない。
「早く来てよ。」って、あたしの『ここ』が叫んでる。ドキドキしてる。そわそわしてる・・・・。

 


待つこと1時間後。


”♪♪♪”


玄関のチャイムが3回音を立てた。
剛が来たってこと。3回チャイムを鳴らすのは剛だっていう合図。
あたしは一目散に玄関へと走り、そしてそのドアを勢いよく開けた。

「よう。」

剛。1ヶ月ぶりの剛が立ってる。

「うん。」

微妙に緊張してるあたしがいる。

だけど・・・そんなあたしの目の前で、剛は何食わぬ態度でスニーカーを脱ぎ始める。
久しぶりなのに、挨拶は・・「よう。」でお終い??
もう少し言う言葉はない訳?「久しぶり。」とか「元気だったか?」とか・・・・・・・。
なんとなく、拍子抜け。
別に剛は久しぶりに会ったからっていって何が変わるわけじゃない人だっていうのは
容易に想像できたりはしてたけど。
でも、やっぱり・・・たまには予想を裏切った態度に出てくれたってって思ってしまう。
しかも、スニーカーを脱ぎ終わったら、あっさりと部屋の中へと直行した。
まるで、自分ちに帰ってきたみたいな感じで・・・。

 

「はぁ。」

ドサッとソファに寝転ぶと伸びをしながら、剛は大きくため息をついた。
そして、少し背中を丸めながら右腕を枕にしてテレビの方を見る。
その後といえば、テレビのスイッチを入れてチャンネルをピコピコピコ・・・・・。
これは剛のお決まりのパターン。
あたしのソファの上でうだうだしてんのは、いつもと同じ剛のパターン。
ある意味、予想を裏切らない奴・・・。

あたしは、剛が寝転ぶソファのそばに静かに腰をおろし、その背中をボーっと眺めた。

だけどさ、同じ部屋には久しぶりに会った彼女がいるっていうのに
ソファでうだうだしちゃうわけ?それじゃまるで30年も連れ添った夫婦みたいじゃない。
そこに愛はあるのか??
いつだったか「落ち付くんだよ。」って言ってたけど・・・そこにはときめきはあんの?


窓から差し込む午後の日差しが、明るく染めた剛の髪と
その短く切った髪の隙間から覗く左耳のピアスにキラキラと反射する。
あたしの『ここ』はそんな小さなことにもドキドキしてるっていうのに。ときめいてんのに。

 


「なぁ。」

そんな感じで1時間が経過しかけた頃、モソモソっと剛は起き上がってあたしを呼んだ。

「な、何っ??」

突然過ぎてびっくりした。変に声が裏返ったりした。
やっぱりあたしと話したいって思ってくれたりしちゃったの??テレビよりあたしって。


「コーラある?」

・・・・・・・・・・・・。

剛は剛。
ことごとくあたしの期待を裏切ってくれる。予想は裏切らないくせに。

「ある・・けど?」

「くれ。」

容易に想像できたわよ・・・このセリフ。
なんだか、あたし亭主関白の夫に我慢しながら連れ添ってる妻みたいじゃない・・・?


剛はといえば、あたしが渡したコーラをおいしそうにゴクゴク飲んで
またソファへと倒れこんだ。

あたしは何なんだ?
剛の『そこ』には愛はないの?ときめきはないの??あたしの『ここ』はこんなに・・・。
話したいこといっぱいあったんだよ?
会社であった嫌なこととか、聞いて欲しかったんだよ?
剛はなかったの?
あたしに聞いてほしかったこと。嬉しかったことも、嫌だったことも・・・愚痴りたかったことも
剛はなかったの・・・?

剛はあんまり多くは語らない人だって分かってるけど、だけどこんな日は
久しぶりに会った日くらいは、ちょっとはあたしの話聞いてくれたっていいじゃない。
剛のこと話してくれたっていいじゃない・・・・。


なんだか無性に寂しくなった。

 

 

好きって言葉だけじゃ愛の深さなんて計れない。そんなのは知ってるけど
だけど、時には言って欲しいこともあるの。
この寂しい気持ちを、不安な気持ちを拭い去るためにも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あたし、この1ヶ月ずいぶん我慢してたかもしれない。
剛は忙しい人だって分かってたから、そんなの付き合うって決めた時から分かってたから
別にワガママ言うつもりはなかったし。
でも、我慢してた。寂しいのに・・・・寂しいって言えなかった。
会えなくて不安な時も、「好きだ。」って言って欲しかった時も、剛に何も言えなかった。
嫌われたくなかったから。迷惑だって思われたくなかったから。
だけど、だけどね、やっぱり言って欲しい時もあるよ。
「好きだ。」って言って欲しい時もあるよ。
だって・・・考えてみたら、あたし剛から「好きだ。」って言われたことない。
付き合い始めてからずっと、「好きだ。」って言われたことないんだもん・・・・・・・・・・・。

 

「ねぇ、剛?」

「・・・あん?」

剛はソファに寝転んだまま、あたしの方を振りかえる。
その顔からは、どこか”めんどくせぇな。”って気持ちが読み取れる。


「・・・・・・あたしのこと、好き?」

「・・は・・・あっっ・・??!!」

思いも寄らなかったのだろう。あたしの言葉に、剛はガバっと跳ね起きた。
そして、目を丸くしてじっとあたしの方を見据えてた。


「・・っな、なに言ってんだ?おまえ?」

動揺してるのが、ありありと分かる。
そりゃ驚くわよね?今までのあたしじゃ絶対に言わないセリフだもんね。


「何って・・・好きかどうか聞いてるの。」
「んな・・、んなの当たりめーだろ。」
「うそ。」
「うそ。って何だよ?じゃなきゃこんなとこ来ねーよ。」
「こんなとこって何よ。・・・別に頼んでないもん・・。」
「あん!?・・おめー・・・ムカツク・・。」
「剛だってムカツクよ。・・・・・・・・好きって言わないし。」
「・・な、そんなんいちいち言う必要なんてねーんだよ。」
「あるわよ。言って欲しい時だってあるの。」
「わかんねぇ・・。」
「女にはそういう時があるの!・・だから言ってよ。好きなら言ってよ。」
「やだね。」
「何でよ?・・じゃ、好きじゃないんだ?」
「・・な訳ねーだろ。」
「じゃ言ってよ。」
「ぜってーやだね。」
「言ってよ。」
「うっせーな。やだって言ってんだろ?」
「言って。」
「・・・うぜぇ。」
「何でよ?・・・・言ってよ。」
「・・めんどくせぇ。」
「・・・・・・・・・ひどい・・・・。」


喉の奥が熱くなってきた。涙が溢れそうになる。
『めんどくせぇ。』なんて・・・ひどいよ。ひどすぎるよ・・・・。


「お・・おい?!・・・・おまっ・・泣くなよ?!」

剛は動揺してる。
何より泣かれるのが苦手だから、それも仕方ない。今までは我慢してた、あたし。
だけど・・・・・この涙は・・・・・・・あたしにだって・・・・止められない・・・・・・。


「・・・・・ったよ。」
「・・・え・・・・・?」
「わかったよ。言やーいいんだろ?言やーよ。」
「・・・・・・・・言ってくれんの・・・・・?」
「おまえが言えっつったんだろうが?」
「・・・・・・・・うん・・。」
「1回しか言わねーぞ?」
「・・・うん。」


剛は覚悟を決めたかのように、大きく息を吸い込んで言った。

 


「アイラブユー。」

 

そして、ソファに再び倒れこみ、お決まりの格好でテレビを見始めた。

 

・・・・・はっ?????

い、今、剛はなんて言った?????え?確か・・・・・・・・・・・・
「アイラブユー。」って・・・・言わなかった?????


素直じゃない。ホントに素直じゃない。ひねくれ者。
ていうか、あんた何人よ?
好きなら好きって素直に言えばいいじゃない。「アイラブユー。」より文字数少ないじゃない。
まったく・・・。


あたしは小さくため息をついて、寝転ぶ剛の背中を眺めた。
華奢なのに、どこか大きく感じるその背中。
あたしの『ここ』は、またドキドキを始める。ときめいてる。
そんなに小さなことなのに、いまだに慣れない。目が離せない。


窓から差し込む午後の日差しが、明るく染めた剛の髪と
その短く切った髪の隙間から覗く左耳のピアスにキラキラと反射する。

 

あ・・・れ?


ひとつ気付いた。今気付いた。
短く切った髪の隙間から覗く左耳・・・・真っ赤だ・・・・・。


剛・・・・・。

 

ごめん。あたし・・嫌な女だったね。疑ったりなんかして。
剛はあたしのことなんか、好きじゃないんじゃないかって思ったりなんかして。

剛はひねくれてるんじゃない。ただ照れ屋なだけ。
好きで「アイラブユー。」なんて言ったんじゃない。照れて「好きだ。」って言えなかっただけ。
分かってるつもりだったのに。
剛のこと分かってるつもりだったのに。
あたし・・・全然分かってあげてなかったね・・・・。


『アイラブユー。』


この言葉は不器用な剛の、精一杯のあたしへの愛情表現。


あーぁ。
どうしよう。あたしの『ここ』またドキドキしちゃってるよ。ときめいちゃってるよ?

 

剛、責任取ってよね。

 


好きって言葉だけじゃない愛情表現は、ときめきを確認させてくれる。
きっとこれからも、この気持ちは止まらない。好きにならずにいられない・・・・・・・・・・・・・

 

 

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剛くんでした。

当時の「あとがき」なんぞを読んでみたら、このお話は【Can't stop falling love】という曲を聴いて浮かんで書きたくなったお話だという事。日本語タイトルは【好きにならずにいられない】ですもんね。

 

剛くんて、私の印象だとシャイで不器用で無口。ま、話すことは話すけど肝心なことはあんまり言ってくれないのかなって思って。

というか、言いたくてもシャイな性格が邪魔をする・・・のかな?

彼女は苦労しそうだなぁとか、でもそれでも好きが止まらない位に剛くんは魅力的な人なんだろうなって思ったりしてます。